ほぼ足りてまだ欲 その先

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映画

 映画「Woman in Gold(邦題:黄金のアデーレ)」は公開されたら見に行きたいね、といっていました。タイトルのクリムトの絵ですが、New YorkのNeue Galerieにあります。『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I』ですね。一階がウィーンのカフェなんぞにしつらえられていて、なんだかちょっと気取ってやがって、というような美術館なんでございますが、その絵のお話でございます。
 私はてっきりアメリカの映画だと思っておったんでございますが、なんとBBC Filmとアメリカの合作です。なるほど、だから主演は「クィーン」を演じたヘレン・ミレンなんですね。
 ウィーンからアメリカへ亡命したユダヤ人が英国英語を喋る不自然さは忘れていただきたい、という点はありますが、事実に基づいた映画ですから、私にとっても興味があります。
 ユダヤ人が如何なる扱いを受けてきたのかという点をまったく知らない人がよもやいるとは思えませんが、抑圧され続けた民族、そしてそれをはねつけるためにやってきたことというのはどこで、いつでも同じなんだなぁという印象を持ちました。
 ナチスから逃れるために病身の父親と、母親を置いて脱出せざるを得ない状況は、今のシリアからの難民も、植民地支配から逃れて脱出した人たちも、みんな同様の苦労を重ねてきているんだぞという認識を持たなかったら、この映画を見た意味がありませぬ。
 徹底して叔母の肖像画であるこの絵を取り返そうとして法廷闘争を続ける主人公と「スクール・ボーイ」と呼ばれても借金まみれになりながら、弁護士として闘う青年の姿は感動的でございます。
 ウィーンのプラッターの公園からフォルクス・ガルテンの前にある最高裁判所まではそんなに近くはありません、なんていう突っ込み、あるいはザッハーに泊まるほどの金持ちだったのか!とか、あの近辺に公衆トイレなんてあったっけ?なんていうのは云わない約束でしょう。
 1998年からかかって決着がついたのはようやく2006年のことだそうだ。
 ウィッキペディアに依ればこれまでに2008年『アデーレの望み Adele's Wish 』、2007年のドキュメンタリー『盗まれたクリムト Stealing Klimt 』、2006年のドキュメンタリー『ヨーロッパへのレイプ The Rape of Europa 』が作られているのだそうだけれど、私はどれも知らなかった。

追記

 主演のヘレン・ミレンは右の口元に痣のようなものがあって、若いときの女優さんもちゃんとそうなっていたのには驚いた。化粧とはいえ、意識しているんだなぁと。