ほぼ足りてまだ欲 その先

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中国帰還者訴訟

 15日に東京地裁で日本に永住帰国した中国残留婦人による国家賠償を求める訴訟の判決があった。判決は棄却である。昨年大阪地裁でも棄却判決があって、その後の各地で起こされている訴訟の判決に影響があるだろうなぁとは思っていた。
<判決の趣旨>(中国新聞:2月15日18時46分)

  • 国は条理上早期帰国を実現すべき政治的義務を負う。
  • 永住帰国許可権限を国内親族に委ねるに等しく、永住帰国を妨げ遅延させる機能を果たし、政治的責務の怠慢があった。
  • 原告らが1988年までに永住帰国したことも考えると、違法性を認めるにはいま一歩足りない。
  • 政府の施策が原因で労働能力を喪失したのだから、政府には補償措置を行うべき政治的責務があった。
  • 帰国後1年たつと生活保護を支給しない運用は、高度な学習、職業訓練の機会を奪い、低賃金の単純労働就労を余儀なくする点で問題だ。しかも帰国後の残留婦人に対する日本語教育施策はほとんど実施されていない。
  • 都営住宅が提供され、不十分ながらも生活保護、年金特例措置の支給がされていることに照らすと、行政府の責務怠慢を違法と評価するにはいま一歩足りない。
  • 裁量権行使の逸脱の可能性、国賠法上の違法性肯定の可能性も十分にあった。しかし最終的には違法性肯定のハードルは非常に高く、いま一歩届かなかったため、請求を棄却する。

 この判決に対する国のコメントは東京新聞2006.02.16:厚生労働省・北原久文中国孤児等対策室長の話「判決は結論的には国の主張を認めたものと理解しているが、判決理由に主張と異なる点もある。今後も帰国者支援法に基づき支援に努めたい。」
 これを読んでくると国には義務はあり、それでいながら政治的責務を怠慢しており、職業訓練をきちんと施していないし、言語教育すら実施していない。たしかに行政はなにがしかの施策は施しているけれど、充分じゃない。→ つまり、状況としては中国からようやく帰ってきた人たちに対して、全く国は充分なことをしていないと断じているのだ。だけれども、法的にこれを支える根拠が成立していない、つまり、立法的に配慮、行動が足りないということだ。
 ではこの人たちがこうなることに至った責務を持つ日本国政府はどうしたらよいのだろうか。この人たちを支援する法を整備すればよい、ということではないのか。私は法律知識を持っていないから多分専門家から見たら「そんな簡単なことじゃないんだよ」という話なのかも知れない。が、ブッシュというおっさんにいわれたら「あいよ、あいよ」と走り回るおっさんは取り残された自国民が苦しい状況にいる時に「あいよ、あいよ」と走り回ってはくれないんだということだ。おかしいよぉ、国籍すら持っていないおっさんが「ひとつ頼みがあるんだけれど・・」といわれると走り回るってのに。
 北原っていう兄ちゃんは「支援に努めたい」といっているけれど、法的に充分じゃないと指摘されたと思うべき「帰国者支援法」に基づいて、という意味でしかない。こうして見ると官僚という職務は人間的感性を放り投げ、公僕たる立場を振り返ることもせず、「だって法律がこうなっているんだもん、しょうがないじゃん」といっていれば良く、そのうち死ぬまでに何回も退職金貰ってえらそうに暮らしていくんだろうと思うと、とても納得できない。と、こう書くと「こいつ単純だなぁ」という人がいるんだろうな。