ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

5年の経験しかないから

NHK教育テレビ福祉ネットワーク「シリーズ 介護の担い手たち(4)討論・人材をどう確保するのか」スタジオでは沖藤典子(ノンフィクション作家)、袖山卓也(介護福祉士)、中村秀一(厚生労働省 社会・援護局長)の議論。
 なにゆえ今回の介護保険見直しで介護報酬が下げられたのかの説明に厚労省の中村局長は「一般の就業者は平均すると勤続11年なのに対して介護労働者は平均勤続5年で比較するのにバランスが悪い状況だった」という。辞めてしまう人が多くて勤続年数が短くなる理由のひとつは介護労働者に対する報酬がまともなものでない、ということに大きな理由があることを知らなくてはならない。
 ならば利用者が負担する介護保険料を見直して上げるしかないのかどうかという点も課題となる。単純にいえば、現場での報酬を上げるとするとその原資はどこから出るのかと云えば利用者が負担するしかない。現実の話として、高齢者の介護をヘルパーや施設の介護者に任せる以上、それに見合った負担をすることは当たり前だという原点から議論が始まらなくてはならないはずである。つまり、応能負担にそのシステムの原点を据えなくては成り立たないのである。それを応益負担という原点から外れないでバランスをとろうとするから無理が起きる。
 厚労省は将来的に介護者を全て国家資格を備えたもの達に置き換えていこうとしている。そのために現時点でも有資格者を抱える事業者は介護報酬基準を揚げるという方針を見せているようである。
 つれあいが登録している在宅介護支援センターに今回介護福祉士を持った若者が入ってきた。訪問介護員、ヘルパーを抱えるセンターではそんな料理を作る、洗濯、掃除を効率よくこなし、なおかつ利用者の服薬管理、移動、食事介助までこなす現場な訳で、昨日今日国家資格を取ったばかりの若者を連れてきても直ぐには現場では役に立たないのは眼に見えている。それでも、事業所としては意味がある。
 家政婦や家事手伝いといった状況から資格であるホームヘルパーに制度が移行した時にも多くの実績を持つ人達が仕事から離れていったことは記憶に新しい。訪問介護員ホームヘルパーから介護福祉士へ資格をかえるとすると、その時点で多くの実績を持つヘルパーがその仕事から撤退することになるだろう。現在の仕事を続けながら資格移行のための時間を費やすことは、その後の介護報酬の大幅な向上というような大きなインセンティブがあるとでもいうのであれば別だけれども、甚だ考えにくい。
 ではなぜそのような眼に見えた不具合を厚労省は奨めていこうとしているのだろうか。こういうシステム移行によって若い介護者でないと就労しにくい、低い報酬レベルを確立しようとしているのだろうか。それによって、外国人介護者導入に理屈をつけられると思っているのだろうか。
 そんな裏の見方をしないことには、このどう見ても理不尽な法改正の方向性が掴めない。厚労省の役人といえば、学校にいた時の成績は抜群に良かった筈なんだから、こんな簡単なことに想像もつかないなんて考えようがない。
 私が知っている施設では併設している在宅介護支援センターを閉鎖しようかと考えているという。まともに考えるととても間尺に合わないというのである。ほうら、だから民間への移行は怖いよというのである。止めたければ止めることができてしまうのである。
 保育の民営化という流れはもう既成のものとなりつつあるように見ているが、門外漢ではあるが、絶対数が減少していくということはないのだろうか。保育士の報酬が極端なまでに削減されてしまう結果となるのではないか、と単純に考えてしまうのだけれども、そんなことはとっくに解決済みなんだろう。厚労省の高級官僚は頭が良いはずだもの。