ほぼ足りてまだ欲 その先

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「Newsfront」

 昨日はこんなタイトルの映画を見た。1948年頃から1950年代後半あたりのシドニーのニュース映画会社のカメラマンを主役にしたドラマである。しかし、のっけから当時のニュース映画の実物が満載でとにかく面白かった。
 冒頭にVJデイに舞い降りる紙吹雪の中くるくる踊りながら、跳ねながらいく青年の有名な場面が出てくる。戦後50周年の1995年8月15日のオーストラリアのテレビ局はこの場面を何度流したことだろうか。50年後のその青年も出演してきたような記憶がある。
 組合のストライキのニュースも流れる。米国がマッカシー旋風で吹き荒れた時の影響が確実に豪州にも押し寄せてきていたことがニュース映画の編集現場にも現れる。豪州は当時、共産党の非合法化の是非を問う国民投票をしたことを初めて知る。しかも冷静に非合法化に対して過半数がNOを表明したのだそうだ。
 ニューギニアの戦地でカメラを廻し続け、死んだカメラマンの最後のフィルムといって日本軍との銃撃戦も映るが、あれは確実に実写だろう。
 チフリー元首相、メンジース元首相の演説シーンも初めて見たし、ニクソン副大統領が来豪した時の今から考えると「お前にいわれたくない!」といってしまいそうになるスピーチにも驚く。
 1953年の第一回The Redex Motor Reliability Trialをニュース映画カメラマンが追いかける、というよりも先行して待ちかまえる。自分たちが運転していて危なかったところにカメラを据えて待つ。ビートルの参加車が案の定、そこでひっくり返る。いってみればこれは豪州一周ラリーである。優勝した車はプジョーの203だったようである(ABC)。
 英国から移民してきた主役のカメラマンの助手は1955年のMaitlandの大洪水の取材にいって濁流に巻き込まれ死んでしまう。シドニーから北に約200km程のワインで有名なHunter Valley地域はHunter Riverの氾濫で何度も洪水に遭ってきたけれど、この年の洪水はこれまででも最も被害の大きなもの(Maitlandのサイト)だったらしく、14人が死に、2000戸以上の住宅が被害を受けたと云われている。こうしたニュースがカメラマンの家庭生活、米国に転身した弟、テレビの普及、ニュース映画の衰退と時代を映しながら伝えられる。ニュース映画を常設していた劇場が映るのだけれども、あれは今でもそのままのStates Theatreではなかろうか。
 弟が米国から連れてきた個人秘書と紹介される女性が、とっても上品なレストランでのディナーの時に、コアラを見たという話をする。弟の振る舞いにも気に入らないが、弟のかつてのガールフレンドと不倫同棲をしていて虫の居所の悪い兄さんは「コアラのペニスはこんなに長いんだ」という話をする。そもそも強くてこれ見よがしなアメリカ人を気に入らないオージー潜在的な感覚もあるだろう。もっともわざと嫌みで、場違いな下品な話をする奴ってのはどこでも、いつでもいるもんだ。しかし、なんと日本語訳はここでこれを「盲腸」と訳す。この単語は再三繰り返されたのだから間違いはない。この意図的な意訳はなんだ。それともこんなスラングがあるのだろうか。
 監督:Phillip Noyce、制作:1978年 カンヌはじめ18の国際賞を獲得。この回の入場者はわずか50名ほどだったかと思う。今回はフィルムセンターの夜の回だったのだけれど、席への案内のシステムがようやく判明。早く来た人はまずロビーの椅子に座って待つ。開場15分前になると呼ばれて、20人ぐらいが順次エレベーター前に二列で並ぶ。6人ずつエレベーターに乗る。大ホール前のエレベーターホールに20人分くらいの椅子があって、そこに最初の20人は座って待つ。ここで本を読んでいた。開演30分前になると、この20人を入れる。様子を見ながら下に声をかけ、暫時20人位ずつ階段を上がってくる。しかし、今回はガラガラだったので、すぐにみんな入場を終える。