(写真はカナダ・アルバータ州政府在日事務所のサイトから)
食用油の原料となるカノーラの世界的シェアは圧倒的にカナダ産が占めていてその生産量の85%は遺伝子組み換え(GMO)である。豪州ではこれまでの主たる輸出市場である日本がGMOに否定的であることもあってこれまでGMOの作付けを許可してきていない。しかし、すでに実験的作付けが始まっている。時も時で、昨年の豪州は大干ばつ。こんな状況の時でもGMOは収穫量を激減することがない、というのがバイオ産業の宣伝文句である。非GMO作物を栽培してきてもこれでは確実な農業経営が実現できない。世は既に温暖化が進んでおり、それを阻止すべく環境保全に関する政策をとるところまでジョン・ハワード保守連合政権は踏み切ることができない。つまり、温暖化=豪州に於ける農作物の危機に耐えるべくGMO化していくことが豪州農業の生きるべき道だとなるのは近そうである。そして各国の生活標準が上がるに従って、日本は双手をあげて云うことを聞くべき至上ではなくなりつつある。ここで忘れてはならないのが、日本の食糧自給率はたかだか40数%であり、豪州の食糧自給率が240数%だという現実である。豪州小麦局は日本のうどん向けの小麦開発、そしてその生産促進でつとに有名だ。香川県の讃岐うどんが使う原材料の90数%は豪州産の小麦であり、うどん向けのための開発は意味があった。しかし、これだけ干ばつ被害が深刻になってくると栽培に関してノウハウが要求され、しかも天災に弱く、輸入に関してあれもこれも制限規則ががんじがらめの日本市場向けに苦労するよりは簡単に市場に送り届けることができてしかも天災に強いと来れば農家の選択肢は自ずから限られて来るというものである。
かてて加えて自動車のバイオ燃料としてカノーラが注目されてきており、GNO化はどんどん進む。米国でもこれまで非GMOのトウモロコシを栽培してきた農家もデュポン系の種子メーカー、Pioneer社のGMOトウモロコシに転換していこうとしている。ひとつにはこれまでのようにトウモロコシと大豆の輪作をしなくても収益の上がるトウモロコシ一本で行くことができるからでもある。その結果、今度は大豆の作付け量が減って値が上がる。この余波でパン屋ではマーガリンが上がり、カレーパンを揚げる油が上がり、豆腐業界では原料が上がり、次から次に値上げだ。しかも穀物のほとんどは米国の穀物メジャーに牛耳られている。
つまりどういうことが進行しているのかといえば、米国メジャーが管理する穀物のグローバル市場から見ると日本市場向けはとうの昔に特殊商品化しており、普遍的な食料ではなくなりつつあるということである。日本は世界の農家の目指す市場から外れてきていてなんら美味しいところではない。
ならば私たち日本に暮らす人間はどの様な選択肢を考えるべきなのか。企業の利益がとにかく何よりも優先する米国政策の要求のままに市場を全て明け渡すことを一旦拒否し、これまで放棄してゴミ捨て場に明け渡してしまうことに目をつむり続けてきた、いやそれを促進してきた農地政策を貫徹してきた自民・公明の連立売国政権から一旦政権を取り上げ、食糧自給率をとにかくより100%に近づける努力をする必要がある。そのためにはなんといわれようと農業市場の無条件明け渡しを断固拒否することだ。そして私たち消費者も「安かろう、何が起こるかわからない」けれど格安の輸入農産品を我慢して、農業の最高を図らなければならない。そして不必要な自動車の運行を断固排除しよう。
え!? そんなことやるわけないって? ま、そんなところだろう。どうなるかわからなくてもいいからGMOをどんどん取り入れて、農産品輸出国の軍門に下り、「人間は自らその存在を貶めて徐々にその動物としてのあり方を弱めて最後に滅亡への道を歩む」という選択肢をとるということだろう。そこまで私は生きているわきゃないけれどね。