ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

流行の場所

 私は結構なへそ曲がりなので、東京都内に新しいビル群が出来てテレビがワァワァやっていたりするとかえっていきたくなくなる。だったらそのままいつまでも行かないで昔からあるところだけ巡って生活していればよいのに、それほどの意地もなくて、なにかのチャンスがあるとぐったりと折れてしまって出かけちゃう。でも確かにチャンスがないと新丸ビルなんかのように外からは見たりするけれど、入ったことがないということになる。実は六本木ヒルズなんてところも映画を見にいったことがあるだけだ。そういえば丸ビルも友人が懐かしの集まりをやるから来ないかと誘ってくれたから入ったことがあるだけだ。
 で、六本木の防衛庁の跡地に出来たミッドタウンだとか、黒川紀章がデザインしたとかいう国立新美術館には当分の間多分行かないだろうと思っていた。ところが友人のひとりで、こつこつと絵を描いている男からお知らせが来て国立新美術館で開かれている絵画展のひとつに出品したという話を聞いて渡りに船と出かけたのだ、本当はこういうところには興味なんかないんだよという振りを装いながら。(話は違うがデザイナーは別居中のおかみさんや、小山遊園ちぃ〜!なんかと今度は党派を組んで闘うらしいなぁ。今度から誰かさんのように「趣味:選挙」とでも書いたりしないのだろうか。
 30年ほど昔の六本木は(また昔の話だ・・・)目抜きの通りから裏にはいるとまだまだ普通の住宅街が静かに拡がっていて、その中にぽつねんとおでん屋があったりして、わざわざそこに行って呑んでいた。ほんのちょっとだけその片鱗はまだ残っているけれど、あんなとんでもなく高い奴があっちにもこっちにも聳え立っていたら、住んでいるのなんて落ち着かなくてとてもいやだろうと思う。
 国立新美術館に到着してみると例のくねくね外観のガラス張りの建物は平日の午後だというのに随分たくさんの人であふれかえっていたのにびっくりした。『大回顧展 モネ』展をやっているんだそうで、既にこの美術館は入場者数が百万人を突破したというのだからこれまた驚く。勿論平日の午後だから入場者の平均年齢は相当に高そうである。われわれもそれに大いに貢献してきたわけである。
 美術館を出ると辺りに「バリバリ」と大変な騒音が響き渡ってヘリコプターが西の森の向こうに降りていく。地図で見ると確かにそっちにヘリポートの「H」という印がしてある。あれは誰が管理しているヘリポートなんだろうか。ミッドタウン横の道を裏の芝生の公園のようになっているところへ辿る。もうなんだかあたかもセントラル・パークにでも来ているかのようである(ったって、一度も行ったことなんてないんだけれどね)。ビルの中に裏から入ってみるとそれはそれはお洒落なお店ばっかりがあってとてもとても私たちなんかが似つかわしくはないスペースである。なにしろ若い女性たちが列をなしているスウィーツ屋さんのショウ・ウィンドウを見ると、なんとケーキひとつが600円も700円もするんである。こりゃ参ったと、通り過ぎて撤退である。
 ディスカウント・ショップといったらここ、という店に寄って一番安いゴロゴロバッグを買って帰る。キャスターが壊れちゃうんじゃないのかなぁ。
 あ、しまった。友達の絵の話をするのを忘れた。いかにも彼の絵らしいものであった。見せる環境が彼の絵の個性にマッチしていない。もっと暗いところで、後ろの壁が黒一色。スポットの下に浮かび上がる。そうした環境であの絵を見てみたい。