ほぼ足りてまだ欲 その先

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鼠退治

 昔は普通のように鼠があっちこっちにいた。天井裏を鼠が運動会をしている、なんて表現が普通で、それを聞いたらどんな状況なのかがみんなわかった。都会の真ん中で集合住宅にしか住んだことのない生活になってしまってから鼠を見たことがない。たまに見たと思ったら地下鉄の駅のホームで電車を待っている時に端の方をちょろちょろ歩いているのを見たくらいのものである。それこそ昔は今のゴキを見たら誰かが叫ぶような状況でお鼠様に反応したものであった。
 先代の三遊亭金馬の得意なネタに「藪入り」という話がある。奉公に上がった息子が久しぶりに実家に帰ってくる。お湯に息子がいっている間に、つい親父が息子の紙入れを見てしまって予想外にたくさん入っているのに驚く。お湯から帰ってきた息子にどうしたんだと叱責する親父。実はペスト予防のために鼠を一匹捕まえて交番に持っていくと一匹五銭でかいあげて貰える制度ができて、それで貯めたんだというのが息子の解説である。
 この話は例の「明治東京逸聞史」にも出てきて、「風俗画報」の明治33年2月10日号にこの話が書かれているのだそうだ。この年の1月15日からこういう制度が始まったのだそうで、森鉄三によると10年以上続けられたらしいが、自分で鼠を飼って「鼠算式に」数を増やし、それを交番に持っていって金を稼ぐ輩が出て一時打ち切られたとしている。ということはその後復活したんだろうか、それともそのままとなったのだろうかというところが気になる。とにかく始まったのが、明治33年だということで、あの「藪入り」が時代考証として成り立っているのかどうか、好きな噺なだけに気になりだした。