ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

悲嘆に暮れる

愛猫、とら急死す。享年16歳。未だに信じられない。
ファイルに保存してあった猫の写真をとりだしてみると、この5-6年のものしかないが、それでも400点を優に超える。なかなか動き回って活発な様子は写真になりにくく、その大半は寝ている時のものばかりなので、それがかえって寂しい。
朝早く、自分がお腹がすくと、私の手に冷たい鼻を押しつけ、それでも起きないとわかると手を乗せ、それでも起きないと、今度は足に噛みつく。薄目を開けてみていると、枕元に座って、躊躇しながら私の頬に手を伸ばそうとする。わかった、わかったと起きあがると「やったぁ〜」という顔で尻尾を立てながらわたしを振り返り、振り返り餌場に向かう。「ちゃんと来ているな」と点検しているようである。
どうしても家族で出かける時に、初めて犬猫ホテルに預けた。迎えに行くとこれがあのうちの猫かと見まごうほどに啼き叫んでいて驚いた。彼はそれまでほとんど啼くということがなかったのだ。多分、その初体験で「あぁ、俺も啼くってことができるんだ」とわかってしまったのだ。それからは不満があると、「にゃ」とか「みぃ」とかいっていたが、それ以上に「わぁぁぁ〜」とか「うぉぉぉおん」とか啼いてみせることがある。それはあまり周囲に見せることがない。ある日、私が部屋に籠もっていて、連れあいや家族が出かけてしまい、静寂が訪れた時に、奴が、廊下をそんな声を出して悠然と歩いていった。私が何事かと廊下に出てみると、奴は「えっ!いたのか!」という顔をしてその場に釘付けになった。きっと誰もいない時にはそうして自分の不満をぶつけていたのかも知れない。ストレスがたまった時、カラオケに行って大声で歌う私にそっくりだ。
冬になると連れあいの枕に連れあいと同じようにして頭を乗せて寝ていた。そのくせ朝方餌をねだる相手は私だったのだから、私はあいつの執事だったのかもしれない。その労働への対価として、肉球をぎゅっと掴んだり、頭を掴んでこすり回したりさせて貰っていた。
 夜遅く、家族が寝静まった頃に酔っぱらって帰ると、明らかに扉を開ける前から起きだしてきたであろう状況で、そろそろと足音を忍ばせながら、そして目を緑色に光らせながら迎えに来る。「オイオイ、こんな時間までどこをうろついてきたんだ」と云われているかの如くであった。考えてみれば人間でいったら80歳を超える年齢なんだから、私を遥かに追い越していたのである。そんなことにも気付かず、赤ん坊に声を掛けるように話しかけていたのは大変に失礼な行為だったのだろう。「ふざけるな、俺はもうそんな歳じゃねぇ」と啖呵を切っていたのかも知れない。
 本当に楽しい時間を貰っていたことに今ようやく気がついた。