今日は12月14日である。となればベートーベンの交響曲第9番ではなくて、赤穂四十七士の吉良邸討ち入りである。今月の国立劇場は吉右衛門と染五郎でその討ち入りの周辺の三本である。とある方からお誘いを戴いて出かけた。実は国立劇場の大劇場は生まれて初めてなんである。小劇場は学生時代に文楽で「傾城阿波鳴門」を見たことが後にも先にも一度あるっきりである。勿論国立演芸場の方は何十回と入っているんで、自分にとってはどっちが表かといったら(演芸場で良く噺家がまくらに使うが)こっちが裏だと答えてしまいそうである。さすがに年齢層も高いけれど、それはあっちも同じだ。かつて良くワイドショーで見かけた女性が母親と覚しき人と二人で入って来た。「堀部彌兵衛」「松浦の太鼓」そして珍しやの「清水一角」である。
それにしても皆さん時間通りには来られないようで、後から後からバラバラご到着で入口近くに座っている私としてはなかなか落ち着かない。こちらの芝居ではなかなか大向こうから声がかからなくて、寂しいものがある。それにしてもこれだけ本筋ではなくて、周囲の話を三つ集めるのは楽しい。知識が随分拡がったような気がする。やっぱり昔を知ることは本当に重要なんだと思う。いや、史実としてだけではなくて、かつてよく使った言葉がここにはたくさん転がっているんだ。「6日の菖蒲、10日の菊」なんて言葉、この歳になるまで知らなかった。あぁ、良かった。