ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

IHI

 正月2日の朝日新聞が一面トップに「IHIが虚偽決算の疑い 課徴金17億円の可能性も」という見出しの記事を書いた。一面トップだから朝日が抜いたのかと思ったら「予定から1カ月以上遅れ、やっと発表した9月中間決算で過年度(2006年度決算)と2007年度中間期を合わせ、営業利益を776億円も減額修正。株主資本の半分に匹敵する大減額だ。黒字だった2006年度は一転、56億円の営業赤字」はすでに各紙が伝えていたことだそうで東証IHIの株を管理ポストに引き当てたそうだ。あのIHIにいったい何が起きたのだろう。
週刊東洋経済』12月29日-1月5日合併号が釜社長にインタビューをしていてネット上でも読める。→ こちら
 この記事によると「大減額修正の原因は、エネルギー・プラント部門の信じられないような“大失策”だった。ボイラー事業では能力の倍もの仕事を抱え込み、あらゆる工程に混乱が「伝染」した。サウジのセメント(プラント工事)は2年間もトラブルを引きずった揚げ句、工事の6割をやり直すことになってしまった。」というのである。エネルギー・プラント事業の担当だった取締役は辞任だという。プラント業界では契約の詳細、スペック(仕様書)の詳細を穴の開くほど読み込んで危ない状況や条件があったら客先と交渉していく。その過程でこのままにしておいたらろくなことは起きない可能性があると思ったら撤退するくらいの勇気が必要だけれども、往々にしてそこまで突っ込んできたエネルギーと経費を考えると、そしてそこまで来た勢いを考えるとなかなか降りる、なんて芸当は出来ない。勿論成功プロジェクトの功労者は後々まで功績を語りつがれるが、こうした「勇気ある」撤退プロジェクトについては本当によく知る人にしか理解されない。採算性が悪くなってくるとこうした契約文書を隅々まで見直して余計な仕事をしないで、それでもやっぱり必要な追加工事の実施で稼ぐ。これは決着がつくのに時間がかかる。ましてやパフォーマンスが問題だとされると揉め事はもっと尾を引く。
 海外の発電所等のボイラーに関していえばIHI三菱重工と共に非常に古くから実績のあるコンストラクターである。その一方の雄が能力を超えて仕事を受けたのがいけない!と社長がいったなんて前代未聞じゃないだろうか。取れ取れ!どんどん取れ、が世の中の常識のような気がする。採算性を上げるためにコストをかけられなかったでは済まないだろう。
 2006年9月の中間期期の半期報告書と2007年3月期の有価証券報告書IHIは2007年12月に大幅に訂正をしたのだから2007年1月に行われた総額約640億円の公募増資や第三者割当増資が事実と異なる有価証券報告書などをもとに行われたことになるわけで、これは虚偽記載事項を元に金を集めたことになるじゃないか、というのが論理だ。
 どうも東洋経済のインタビュー記事によると財務畑出身の釜社長は「事業部制を取っているから財務畑からは窺い知ることが難しい」というような発言をしている。だったら社長なんて要らないから事業部ごとに独立会社にしたらどうだ、といいたくなる。釜社長は羮に懲りて膾を吹くのたとえそのままに「エネルギー・プラント部門については、今後、セメントはよほど好採算の案件以外、やらない。ボイラーもリスクのある工事、海外工事はやらない。プラントは知らない国、知らない客、知らないベンダーとはやらない。」と発言しているけれど、IHIのテリトリーから考えたらこんなの全然現実性がないと思うのだがなぁ。知らない国、知らない客、知らないベンダーとやるからこそがっぽり儲かることもあるけれど、ごっそりやられちゃうこともあるのだ。プラント業界は賭なんだと割り切れる経営者でないとこの分野はやって行かれない・・と乱暴にいってしまう。ただ、足を抜くのはすぐに出来るけれど、一度足を抜いた分野に復帰するのはなまなかなことでは出来ない。