ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

総背番号制は是か非か

 今回はちょっと面倒くさい。
 話の発端は、例の行旅死亡人、要するに身元不明死亡者の話から始まる。なんでも週刊朝日の記事によれば「豪州のVIC州では身元不明死亡者の解剖の鑑定結果、口腔内写真、レントゲン写真、デンタルチャートで、死体の情報がデータで管理されて、パソコン上で把握できるようになっている」「遺体の歯による身元判明率は約97%で、残りの3%は、DNA鑑定と指紋で照合され、最終的にはほぼすべての身元が判明」するのだと、私の知り合いがmixiの日記に書いたことに端を発する。
 なぜ、日本ではこうしたことができないのかというわけだ。その前に、豪州では医療費は保険ではなくて、medical levyという税で成り立っている。一定の年収額までは所得の1%を徴収される。その代わり、publicの病院に行くのであればただで診療を受けることが可能。もちろん民間医療保険に加入することも奨励されていて、privateの病院で上等な扱いを受けたい患者はいくらでもmedical levy以上の自己負担をして受けることができる。従って、データーを一元化するのは比較的有効である。ただ、市民権を得ていない限り、このシステムに組み入れられることがない、という点が問題となる。
 もちろん日本では厚生労働省が全国の歯科医のカルテのデジタル化を進めればできるのではないだろうか。これは縦割り行政の問題ではなくて、やる気の問題だろう。もちろん捜索願が提出され、受理されて動き始める警察現場がこれを使いこなせるかどうかという問題も大きい。なにしろ警察の現場は今でも相当にアナログ的だろうことは想像がつく。
 戸籍の問題、住民票の問題、死亡者への年金支給の問題等を含めて考えると、これらを解決していこうとすると、次のステップは国民総背番号制に踏み切るしかないのではないかという気がしてくる。もちろん、ここに踏み切るには国民ひとりひとりの個人情報がどこまで国家によって把握されていて良いのか、あるいはだあれも知らない部分を自分ひとりで抱えている安心感は個人の固有の権利だという主張もある。
 社会保険の保険料支払いにしても、今の状態では払った奴は正直者がバカを見る結果になってしまうのではないだろうかという懸念もかなり深刻だ。
 もっと深刻といえば所得税課税のための所得の完全把握が実現できていない点にもある。企業に雇用されているものはある意味かっちりと源泉徴収されていてどこにでても恥ずかしくない納税をしているけれど、全く自分の最良を加味することはできないし、基礎控除という一定額でしか経費が認められていないという点に疑問がある。自営業者の中には少なくない割合で所得を隠匿している可能性がある点についてはみんながみんな承知しているけれど、誰もそれをエポックにしてはならないのだという認識に立っていると云っても良いだろう。「それをいっちゃぁ、おしめぇよぉ〜」なんである。
 この点をその知り合いに提案してみた。だから総背番号制はどうよと。
 一般的に良くある反応が返ってきた。「大企業に雇用されていた人間は老齢年金も二階建てであり、健康保険組合も作られていて良いだろうけれど、自営業者にはそんなメリットはどこにもない」というのだ。
 それでは、制度的に不利な立場に立っているんだから所得が完全捕捉されていないという点でその不利をバランス取っているんだといわんばかりだった。
 それはこの総背番号制の議論とはポイントがずれている。
 小泉は年金改革と称して小手先のことをいじって「百年安心」といっていた。国会議員の老齢年金を整理するといっていたけれど、どさくさに紛れてそれっきりだ。
 問題はフラットなシステムになっていないという点にある。老齢年金もどんな仕事に就いていても、自分の積み立て年金になっていて、一定年齢になったらその時の資産にあわせて支給されることにすればわかりやすいし、将来を見通しやすい。
 いざ、他人様の手にお世話になる必要が出てきたら、一定金額の年金だけ残してすべての資産を国庫に納めて最後まで面倒を見てくれる制度にすればよい。それだったらため込んでいてもしょうがないから皆さん最後の補償があるんだから、どんどん遣ってお金がまわる。
 しかし、さすがにこんなシステムを構築するためにはシステムがフラットじゃなくちゃ実現できない。そのためには所得の完全捕捉がフェアネスという意味でも必要ではないのだろうかと思う。
 尤も、お金を持っている人たちにとっては今のようなグズグズな魑魅魍魎としたシステムの方が暮らしやすいだろうし、税理士や会計士にとってはやりがいがあるのかも知れない。
 そんなシステムにしたらどんどん金持ちが資産を持って外国に逃げていっちゃうと良くいわれる。1月1日に日本に住民票を置いておかなければ住民税が免税になるといって実行している竹中平蔵のような卑劣漢もいるが、それだったら北欧各国なんて今にも誰も住民がいなくなっちゃいそうなものだけれど、逆に海外から移民希望者がいる。
 それでも総背番号で何もかも自由裁量の部分がなくなることに人間は耐えられないだろうか。