ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

ご親切

 今日の東京はどんよりしていて、時折雨がシャラシャラして、デモにはよい案配だったのだろうけれど、歩くのには気を遣う陽気だった。
 涼しいから築地に行っておこうと思って地下鉄から降りたら、なんだ、さらさらッと降り始めていた。いつもの様に帽子は被っているのだし、大した降りじゃないから鞄から折りたたみを探り出すのも面倒だからと、そのまま歩くつもりでとことこ行くと、後ろから早足でやってこられた、ほぼ同年配と覚しき女性が、私を振り返りながら追い抜いていこうとする。意を決した様に、私に「傘にお入りになりますか?」と声を掛けてくださった。あちらにしたら相当意を決したに相違ない。なにしろ見ず知らずの爺さんにお声をおかけになるのだから。
 「ありがとうございます、傘は持っております、大丈夫です」とお断りしたのは、なんだか申し訳がなかった。
 で、今度は帰りなんだけれど、扉を開けたら、やっぱり降っておって、こりゃ最初から傘を出さなきゃしょうがないと鞄を探っていると、これまた後ろから出てこられた、ほぼ同年配と覚しき女性が、これは大きな傘を広げて、私にさしかけてくれた。「いやいや、恐縮でございます」と、暫しお話をしてお別れしたのだけれど、皆さん、本当にご親切だ。
 しかし、ハタと思ったのだけれど、私が自分で思っているよりも、私の行動が相当によぼよぼしている、ということではないのだろうか。見るに見かねるという奴なのではないのだろうか。
 そこからは極力背筋を伸ばして歩こうとするのだけれど、ちょっと一息つくと、すぐに猫背になっているのだった。