ほぼ足りてまだ欲 その先

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冷徹

 はなはだ冷徹な話で恐縮だけれど、アルジェリアでの日揮の社員が犠牲になった事件の報道を聞いていると、厳重に警備されていた天然ガスサイトが明け方のこととは云いながらまったく容易になんのごたごたもないままに進入されてしまったことは非常に象徴的な出来事であるという印象が強い。
 この現場は多くのアルジェリア人が働いていたという点が北アフリカアラブ諸国の現場と異なる雰囲気がする。多分アルジェリア人はこの建設工事の中では多くが単純労働者として雇われていたのではないだろうか。キャンプ内に守られて暮らしている外国人技術者とこの工事サイトの中での重要度は全く違っているから扱いも大きく違っていたことだろう。こうした現場では技術者キャンプと労働者キャンプとは大きく扱いが違っているのが当たり前だ。
 この事件には本当にイスラム過激派によるテロ行為だけがその要因なのだろうか。現場での対立というような要素はないのかと真剣に考えたい。
 それにしても犠牲者の帰国に際してこの扱いは驚くほどの別格な扱いであるという印象は否めない。
 ネット上で見ていると「彼らのような人たちのおかげで日本のエネルギー政策が支えられているんだ!」という声を見るけれど、彼らはBP+Stadoilから建設工事を請け負って工事しているコントラクターなんであって、それは全く当たっていない。どうも、認識が混乱している。日揮アルジェリア国内の他の二つの建設サイトから一時期社員をアルジェの事務所に引き上げさせているそうだ。
 海外の工事に取り組んでいる日本企業はそんなに多くはない。建設業界なんかが海外の仕事に取り組むのもそんなに昔からのことではないし、その取り組む姿勢は恒常的なものになっていない。なっていないものだから、知識や経験が蓄積されない。
 そこへ行くと、日揮、千代化、TECといったいわゆるエンジニアリング会社は米国のベクテルと云った企業ほどではなくてもかなり世界的なレベルに達している。それでも他社の仕事をやった人を派遣で補ったりしていかなくてはならない。日本のいわゆるプラント・メーカーと云われる企業や鉄鋼企業のエンジ部門なんかも取り組んでいるけれど、仕事を途切れさせることなくとり続けていくのは容易ではない。だから、経験者を抱えていくことがなかなか難しい。
 こうした現場を支える人たちは日本の労働者の中では大変にマイノリティだ。
 フィリッピンに至っては海外労働省という省庁があるくらい海外に出稼ぎに出ている。それがおおきな外貨稼ぎの要因になっている。日本人が外に工事で出かけるなんて彼らの数に比べたら話にならないほど少ない。