ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

公務執行妨害

 2007年10月11日朝、東京・神楽坂で寿司店を営む二本松進氏(当時59歳)が築地市場仕入れ仕事の後、運転席で待つ妻のもとに戻り出発しようとしたところ、高橋巡査(女性、当時54歳)が立ちはだかった。「先を急ぐのでどいてもらえませんか」と言うと、その女性警官は「法定禁止エリアだ」と怒鳴り、事情を説明すると、「暴行されている」と虚偽の通報。駆けつけた築地署員は公務執行妨害と傷害の疑いで二本松氏を逮捕、19日間も勾留した。
 築地市場の朝は、仕入の車でにぎやかだ。駐車場では収容しきれず、付近の路上には、二重駐車や、歩道の上、交差点のなかにさえ仕入のための車が駐車してある。二本松氏は視力が悪く運転できないため、奥さんが運転し、二本松氏が買出しを終えて戻るのを車内で待っていた。二本松氏は一度、買った食材を車に積み、買い忘れた枝豆を思い出し再び近くの場外市場で買って奥さんが待つ車へと急いだ。
女性警官の高橋巡査に、二本松氏は声をかけた。『今出ますので、そこを退いてもらえませんか』高橋巡査からは、意外だったのかなんの反応も無かった。『すいません、先を急いでいるので、そこを退いてくれませんか』高橋巡査はまだ無言。その真意を測ろうと顔をみようとしたが、二本松氏は目が悪く、警官の微妙な表情は読み取れなかった。だからこそ、奥さんに運転を任せていたのだが・・。『ここは法定禁止エリアだ!』とだけ、高橋巡査は告げた。
『法定禁止エリアでも、運転者がエンジンをかけていてすぐに運転できる状態にあるだけでなく、今出ようとしているんだから違反にならないはずじゃない。だいたい出ようとしている車を止めるのがおかしいよ』と返した。
『いや、ここは法定禁止エリアだ』
『私も40年間免許を持っていろいろな場面を見てるけど、向こうの法定禁止エリアの放置車両には何もしないで、運転手が出発しようとしてる車を妨害して即取り締まる警察官など見たことないよ』
女性警官はカバンの中から青い切符の束を取り出すと、トランクにたたきつけ、「免許証を出せ!」と迫った。
「『私は運転手じゃないし、道交法に違反してない人間に切符切るなんておかしいよ』と車の中に入ろうとしたら、女性警官がドアを押して入れさせないんですよ。閉めようとしたら、警官の左手がドアにちょっと触った感じで、左手を上にあげたんです。そして無線で『暴行、暴行』って。そしてすぐにパトカーが5〜6台来ました」
 二本松さんは駆けつけた警察官に後ろ手にされ、手錠をかけられて逮捕された。容疑は「公務執行妨害」と「傷害」だった。警察によると「免許証の提示を求められるや『後ろにトラックが止まっている。差別するな』等と怒号し、巡査の胸を7〜8回突くなどの暴行を加え、運転席のドアを閉めるなどし(触れたのは左手のはずが)右手にドアを強くぶつけるなどして、職務執行を妨害し」「全治10日間の右手間節打撲の傷害を負わせた」ことになっている。警察は、二本松さんが「左右の肘で交互に胸付近を突いた」とも主張する。しかし、二本松さんは「私は六十肩で、肘も上がらないんですよ」と言う。
その後の取り調べは、警察に都合のいい自白を求めるものだった。「『警察官をぶん殴ってごめんなさいって言えば一日で出られる』と言われ、夜まで取り調べられました。最終的には『暴行はなく、警察官の自傷だった』と言われ、さらに『(公務執行妨害とするために)警官の黒カバンに触れたことだけは認めろ。認めないのなら起訴する』と言われました」
そして二本松さんは供述書にサインした当日(19日目)、起訴猶予で釈放される。しかし「やはり逮捕には納得いかない」と、’09年10月、東京都と国に対して925万円の損害賠償を求めて裁判を起こした。二本松さんは「警察官が嘘をついて不当逮捕・勾留したことを、とにかく謝ってもらいたい」と語っている。

 【速報】二本松進さんが警視庁築地署に不当逮捕されたとして損害賠償を請求していた裁判で、東京地裁(松村徹裁判長)は被告・東京都に240万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。この裁判、二本松さん本人、弁護士、もちろん私も、誰1人勝てると思っていなかったので、一同、あぜん。
 確かに警察が公務執行妨害をでっちあげた、ひどい事件なんですが、こんなことは日常茶飯事なので、まさか裁判所が原告を勝たせるとは誰も思っていませんでした。しかも、19日勾留されただけで損害賠償240万円は(裁判所感覚では)破格!
松村徹裁判長は判決を読み上げる前、「ゆっくり読みますね」と言うので、「原告の請求をいずれも棄却する」しか言わないのに、嫌みな奴だなあと思っていたんですが、まさか警察を敗訴させるとは。私の隣の席に東京都の代理人がいたんですが、あわててなにやらメモをしていました。(2016.03.18 寺澤有twitter

 こういう事件は日常茶飯事だということが大変驚きだけれど、よくよく注意して街を歩いていると、交番の近辺や、白い自転車に乗った若い警官が通りかかりの人を平気で呼び止めて、「荷物の中を見せて貰って良いですか?」と職務質問している様子が見て取れる。その頻度はかつてに比べると随分増えているという印象だし、若者と話していると、そういわれて停められたという話は普通に聴く事ができる。いつの間にか、こんな時代になってしまっている。これが怖い。事件が起きたら、ごくごく普通に監視カメラによって映し出されているという報道がされる。それ位平気で見張られているという世の中になっている。それが犯罪の予防になっているんだという説明がなされているけれど、いざとなったときにそうした動きが一体どこに、どんな力となるのかを恐れる必要がある。