ほぼ足りてまだ欲 その先

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豪州総選挙

 前にも書いたはずだけれど、オーストラリアの総選挙について、この際だからまた触れておこうと思う。まさに投票日を迎えている。
 豪州の選挙は国民皆投票制度といっても良くて(勿論日本でも18歳以上は全員に原則として投票権がありますが)、棄権をすると罰金になります。そもそも豪州の罰金というのは隅々まで浸透していて、例えば電車の中に書いてある注意事項を見ると何かといえば罰金だと書いてある。座席に足を載っけたら罰金、車両を傷つけたら罰金とまで。
 で、よほどの事情がない限り投票しなくてはならないということになっているので、毎回の投票率は確実に90%を超える。間接民主主義という以上は、本来的にはこうでなくてはならないのだと私は思っている。
 日本の投票率の惨憺たる有様を見ていると、これでは本来的な間接民主主義はもはや破綻しているというべきで、今のほぼ独裁的な政治体制を構築してしまったのはひとえに投票を棄権した有権者が負担するべきではないかと考えている。
 かつて自民党うっかり八兵衛森喜朗が平然と言い放った「選挙民は横になっていてくれれば良いんだ」という期待に思いっきり応えてしまっているのでは、もはやある意味での「無法地帯」になってしまっている。
 中には罰金による半強制投票は民主主義の原則に反するという論理を展開する人たちがいるけれど、それはもはや間接民主主義の形骸化に他ならない。基礎となるべき投票という行為を放棄するのは制度に対する冒涜に他ならない。
 豪州の場合はただそれだけではない。
 下院選挙は、全優先順位付連記投票制(Full Preferential Voting)といって、候補者全員に順位をつけることを要求される。
 第一位として得票した票が過半数を超えた候補者がいれば、その人が当選。これで終わり。しかし、第一位として得た票が過半数を超えた人がいなかったとすると、最下位は排除され、その人が得た票の第二位順位とされた候補者の得票に分けられる。それでも過半数がいなかったら、またその時点での最下位候補の票を第二位とされた候補者に分配していくという仕組み。だから、時間がかかるし、厳密な管理が必要となる。
 あの雑ぱくといって良い、豪州人が良く根気よくこの作業をやるものだと感心するけれど、これなら、納得して投票にいっても良いと思える。
 これをやると、民意が非常に色濃く出てくる。だから、自民党がやらないわけがよくわかる。オーストラリアは労働党対保守党・国民党連立の二大勢力によって政権が争われている。それでも、ここ15年くらいはころころと政権が変わっている。もはや時の首相が誰だか良く想い出せないのは日本と大差がない。
 それでも国民の9割が参加しているのと、時と場所によっては3割くらいしか参加していないのでは中身の意味合いが違う。
 今ではどうなっているのか知らないが、かつての豪州では海外にいる有権者は在外の公館に行って、パスポートを提示すれば投票ができたときいたことがある。そんな簡単なやり方では、朝一番に国内で投票して、そのまま飛行機に乗ってその日のうちに外国の公館に出頭してもう一度投票することが可能じゃないのかと聞いたら、「そんなバカなことをする奴はほんのひとつまみで、選挙結果に大きな影響はない」といわれたことがあるけれど、その辺は大いにおおざっぱなオーストラリア人らしいと舌を巻いたことがある。