ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

ルーム・シェア

 欧米ではごく普通に語られるルーム・シェアも私が住んでいる国ではなかなか普及していない。娘はこれまで二人でシェアしていたが、今度はもっと広い部屋に引っ越して三人でシェアしようと計画中である。これまでの部屋は知り合いの持ち物だったので、なんの問題もなかったけれど、今度は他人の持ち物。不動産の賃貸契約をシェアする場合にどうするのかと興味津々だった。普通であればこれだけシェアの考え方が普及していない(はっきりいってしまうと街の不動産やレベルではそんなことを発想することもないだろう)のだから、誰かが契約してしまって別に貸し主の諒解なんぞとらずに知らないうちにシェアしてしまうことになる。だけれども彼女たちは不動産屋に明確にわたしたちは友人同士でシェアすると宣言した。
 すると、不動産屋は困ってしまった。前例がないのだ。これが都心の高級高層住宅地域であればあり得るのかも知れない。そんな契約書のひな形がない。すると過剰防衛に走る。三人のうちの一人を借り主とする契約書とし、他の二人を連帯保証人とするというのである。ほ、ほぉ〜!ところがここからが凄いのである。この連帯保証人二人にそれぞれ保証人が必要だというのだ。それで父親たる私が連帯保証人の保証人になると通告すると、今度はこの保証人の身元調査だといって職場に電話をする。私は週に7日間勤務をしていない。どうも私が勤務していない時に電話をしたらしく、誰も出ないという。なんで分かったのか。自宅に電話をしてきたのである。自宅にはいたのであるからそれで良いのではないのか。
 これで分かったことだけれども、この不動産屋は保証人はみんな自営業だとろうと被用者であろうと、必ず事務所的なあるいは店舗的なところにいて、そこで仕事をしているのである、と頑なに前提をおいているのである。こうなると自宅で仕事をしている人、つまり、作家や研究者、あるいはクリエーティブな仕事をしている、あるいは自宅でインストラクションの仕事をしている、というような人はどうやって自分の仕事を納得させるのであろうか。あるいは、リタイアした人はもうすでにこのような保証人という立場には立てない、ということなのであろうか?これは実は非常に大きなテーマである。高齢者の人たちはどんどん新規賃貸契約の当事者からエクスクルードされてしまう場合がたいへんに多い。災害で自宅が被害を受け、賃貸せざるを得ない状況になった時はどのように解決ができるのだろうか。
 貸し主のプライバシーは全く公にされないが、借り主のプライバシーはこうしてどんどん暴露されていって別になんの問題ともならないことが不思議である。娘が困るだけなので、不動産屋に対しては、唯々諾々と仰る通りに受け答えてはいるのだけれど、娘が絡んでいなければ、とっくに啖呵を切っているだろう。
 私の国の国籍を持ち、私の国に暮らしている娘、そして私であってもこのようなフェアでない立場に立つわけで、これが、国籍も違っていたりするともう途端にけんもほろろにされてしまう状況は目に見える。つまり、全くユニバーサルではない。これが、私の国の市民意識の限界点である。