ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

NHKクローズアップ現代

 今日は中国帰還者の方たちの多くが知らぬ間に受けていたといわれる「戦時死亡宣告」についてであった。1959年に制定された未帰還者特別措置法によって、20,789名とされていた中国の未帰還者のうち7割近くにあたる約14,000名が1976年12月末までに戦時死亡宣告を受けていた。なぜ、そんなことをしなくてはならなかったのか。当時の厚生省の担当者の一人という人は番組で、「調査は結果が出なくてはなりません、いつまでも、わからない、わからないではすまないんだ」と発言。実際には引き揚げ問題・未帰還者問題の終了を宣言して残留邦人の調査・機関に幕引きをはかった、つまり、そこでみすみす中国に暮らしている残された人たちがいたにもかかわらず、「本人たちに帰国の意思なし、あるいは既に死亡している」として終わらせた。その後は日中国交回復するまで放置されていたわけだ。私たちの公僕の得意手のひとつは一度そう決め、決断したからにはおいそれとは撤回しないし、それが間違っていても誰の責任なのか誰にもその追及が及ばないようにする、ということだ。
 和歌山に住む95歳の母は当時役場から三名の役人がやってきて、もう死亡と認めろと何度も何度も迫られたが決して首を縦に振らず、とうとう最後まで納得せず、国交回復後、未だ外国に対して解放されていない地域に暮らしていた息子を捜し出したという。自分が子どもを残してくることに悩まなかった親なぞどこにもいない。しかし、役人に迫られ、とうとう仕方なく死亡を認めてしまった親だって、何も考えずにそうしたはずがない。しかもその生き別れの仕方も尋常ではない。そんな別離を抱えていた親がその子を忘れることなんてあり得ない。それを「お上」の力によってあきらめさせた厚生省官僚はどう考えても人間の感情を無視していると言える。こうした行いを今の厚生労働省の官僚ではなかったとしても、同じ系統の担当官庁が押しきった結果、1972年までそのままにおいておかれたのである。もちろん国交のなかった、共産主義の(今もそうだけれど)、しかも、日本が無理矢理開拓団を押し込んですべてではないにしても土地を収奪してきた相手国である。そう簡単に事態が解決に向かったかどうかはとてもわからない。しかし、放置していたのとそうでないのとでは問題は大きく異なる。
 自分の政府からそのままに放置されているという点では今の北朝鮮に拉致されてそのままにされている人たちと全くその状況は同じだ。その人たちを生活保護で暮らしていられるんだからそれでいいじゃないか、ずっと日本に暮らしている人たちだってそうして暮らしている人がいるんだ、という論理はあまりにも単純である。