ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

散歩

 陽気に誘われて浅草に出た。ものすごい人出だ。もう祭が始まったのかと思うくらいだ。場外馬券売り場の裏通りもまるで重賞レースのある日と見まごうかと思うが子ども連れが多いのがそんな日と違っている。競馬の日しか開けていない煮込み屋が多い中で、いつでも店を開けている「正チャン」の店先にもたくさんの人が座っている。出来るだけ人の流れの少ないところを選んで吾妻橋まで出ると船着場はそれはもう人、人、人。トイレによると女性用は人の列。船乗り場にはながぁ〜い列が出来ていて一体こりゃいつになったら乗れるのだろうかと誰もが疑心暗鬼になろうかというほど。後ろの方で橋の上で並んでいる人が一番気分が良さそうだ。川を渡る風が頬をなで、波の動きはいつまで見ていても飽きない。そこに近未来的な船がやってくる。いくらなんでもありゃねぇよなぁ。「品」というものが感じられないんだ。橋を渡るとお馴染みのアサヒビールのそりゃぁもの凄いオブジェのあるビル。その後ろにかつては煉瓦造りのビヤホールがあった。あれが残っていたときに呑んだことはあるけれど、写真も撮っちゃいないし、ほとんど覚えていない。銀座のライオン・ビヤホールと比べてどうだっただろうか。今は船のイメージでデザインした4階建てくらいの建物になっていて、それぞれの階でアサヒのビールやここだけで呑める地ビールがある。一番下の階が23 Banchi Cafeとしてあって店の中に大きなカウンターがあっていくつものtapがある。カフェというだけのことがあって外はオープン・カフェになっているのだけれど、そこで友人がディレクションをしてなん組ものアコースティックのグループが3日間に亘ってそれぞれ出演するというので寄った。とても良い天気だから風に吹かれながら暖かくなった石段の上に座って眺めていた。どうやらこの店は話に聞くと犬OKなんだそうで、やたらと高そうな犬を連れた人が通りかかる。そう思ってみていると犬の顔つきというものはやっぱり飼い主の雰囲気をそのまま映し出してしまうような気がする。人の良さそうな人が連れている犬は、その犬の表情も「人が」、じゃなくて「犬が良さそう」だ。なんだか格好をつけている木で鼻を括ったような表情をしている人の連れている犬はやっぱり顔に愛嬌がない。
 見ている間にキャロル・キングを彷彿とさせるようなオリジナルをギター一本で弾きがたる女性、ブルースのギターを弾かせると上手いのに、歌い始めると怒鳴り声になっちゃう自分をつかみ切れていないだろうと思われる男性、ビートルズからフォークソングまでを非常に丁寧にまとめている外房から来た男女のデュオ、最後に友人のお兄さんが渋い声で切々と唄う。彼の唄は前にもロックのスペースで聴いたことがあるのだけれど、あんながちゃがちゃした場所でなくて、この位のしっとりとした雰囲気がぴったりだ。なんだか昔の大学の文化祭中のキャンパスの片隅で唄を聴いているようだった。
 場所を変えてひとしきり楽しく話し、帰りかかるところでばったりと友達夫婦と遭遇。そこからエンドレスの話に突入す。