厚生労働省が5回開いて検討したといって報告書をぽろっと出したんだそうで、この5回の検討がたった2ヶ月ほどの出来事だから霞ヶ関官僚のやることにしちゃあ迅速で随分効率的な検討会だったなんてことをいっている場合ではない。どうしてこんなに短期間で報告が出せるかといえば、いつもの手段で、この検討会が厚生労働省社会・援護局長の私的検討会なんだそうで、そこに官僚が描くところの結論ありき資料を提示して、「さぁ、こっち!こっち!」ともっていっちゃう。「これだけの学識経験者が加わって出した結論がこれでございます」と「報告書」の形にして公にして新聞に書かせると、こういうことになる。
広く国民の声を聴くという姿勢を作ることにも余念はなくて、この検討会の傍聴を許したりする。しかし、公告期間はあっという間で、すぐに締め切られてしまう。姑息な手段を執るのは巧い。それが国家のためになるんだと思っているということなのだろうか。
生活保護基準が低所得層の生活レベルを上回っているからそれを下げるという。どういうことかというと、「真面目に働いている人が一生懸命やっても生活保護の方が高いお金をえられる」のはおかしいだろうという論理。しかしそれは、生活保護を申請したら保護対象になるはずの人がそれを申請していないということになるのだ。つまり、生活の格差が拡大進行して低所得層がどんどん増えてきてもどんどん生活保護適応を下げていってしまうことによって予算を削減していくということになる。この動きは憲法違反ではないのだろうか。
問題なのはこのような検討会とか有識者諮問会議のメンバーだ。霞ヶ関がつくる路線を進めるために作るものだから当然そのシナリオを押してくれるメンバーにしておくのがよいわけだけれども、あからさまにするわけにはいかない。尤もごく平然とあからさまなメンバーを集めて平気でやっちゃう鉄面皮も多い。しかし、心ある人でもこんなメンバーに入れられちゃうとそっちを容認する人間なんだと見られてしまう恐れ大だから控えようと心がけるんじゃないだろうか。するとどんどん官僚の言いなりとなる。尤もそんなことには流されないぞと選定された後で心構えしていたとしても、少数意見として処理されてしまうことも十分あるだろう。
今回の検討会のメンバーは下記。
- 慶應大学商学部商学科教授・樋口美雄(1952年栃木県生。慶大博士課程商学研究科修了。慶應商生え抜き。労働経済学、計量経済学)
- 首都大学東京・都市教養学部教授・岡部卓(1953年北海道生まれ。日本社事大卒。明学大院社会学研究科修了。福祉事務所SW、講師を経て現職。「生活保護制度の在り方に関する専門委員会」委員。)
- 早稲田大学・法学学術院教授・菊池馨実(北大法学部-北大法学研究科博士、社会保障法、北大法学部助手、阪大法学研究科助教授→早稲田)
- 慶應義塾大学・経済学部教授・駒村康平(慶応大経済学研究科博士課程単位取得退学、社保研、国立社保・人口問題研、駿河台大経部助教、東洋大経助教、教授を経て慶應。経済政策論・社会保障論)
- 神奈川県立保健福祉大学・保健福祉学部社会福祉学科教授・根本嘉昭(1967東大教育教育行政卒、全社協、厚生省社会局(社会福祉専門官、保護課課長補佐)、日本赤十字社、立正大社会福祉学科教授、創立時から県立保健福祉大教授)