ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

ま、まさかぁ

 朝日新聞2007.12.08付朝刊「異見新言」に立教大(政治学・日本現代史)の中北浩爾が書いている中で「日本が中核的労働基準を定めるILOの8条約のうち二つを批准していない」と書いているのを見て、え!今の日本が?と疑問に思った。なんのことかと思ったら、どなたがお書きになったのか知らないが、Wikipediaですら書いてある。「1998年のILO新宣言(「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」)で「最優先条約」とされた8条約のうち、105号(強制労働の廃止)、111号(雇用及び職業における差別待遇)の2条約」だというのだ。
 連合のサイトを見るとなぜ未批准なのかについて「105号(強制労働の廃止に関する条約):国家公務員法地方公務員法でストを「企て、共謀し、そそのかし、若しくはあおった」者に対する懲役刑を定めているのが条約に抵触。111号(雇用及び職業についての差別待遇に関する条約):条約の禁止する7つの根拠に基づく差別を明確に禁止する国内法の不在と、使用者側の心理的抵抗」であると書かれている。
厚労省の2005年4月18日に開かれた第4回ILO懇談会議事要旨を見ると2年前でもこんな具合。
111号条約

  • (労働側)111号条約は人権擁護法(法案)とも関連しますが、批准していくという体制が必要ではないでしょうか。
  • (使用者側)今回、111号条約が基本条約であることに鑑み、取り上げてもらうことを提案しました。批准(の可否)を議論するに際して、もう少し臨場感のある情報提供をお願いします。
  • (政府側)今いただいたご指摘がありましたこと、関係省庁にもフィードバックしていきたいと考えています。

105号条約

  • (司会)では、使用者側から要望のありました105号条約についてはいかがでしょうか。
  • (使用者側)これも基本的な条約として取り上げていただいたものです。
  • (労働側)G8加盟国のうち、日本だけが未批准というのはいかがなものでしょうか。国公法、地公法の「(ストを)あおり、そそのか」した者に対して懲役刑を課し得る条項が条約第1条(d)に抵触して批准できないわけですが、何とか見通しを立てていただきたい。ガス、水道等個別事業法でスト権に制約をかけている場合でも、懲役刑を課しているならば、条約に抵触するのではないでしょうか。
  • (政府側)条約の批准に際して国内法令で担保できているかどうかは、当該条文が適用対象となる者がいるかというよりも、制度論としてどうか、という点を中心に考える必要があると考えています。

 このままにおいておくと、やっぱりこの国はお代官様と越後屋のやりたい放題になってしまうようではありませぬか。そういえば差別に関する姿勢として甚だ遅れているという件については随分昔に取り上げたことが思い出されてきた。フェアネスの感じられない労働環境に自ら身を置くべく飛び込む人たちを期待できるのだろうか。たとえばフィリッピンとの間にFTAを結んで介護者としてフィリッピンからの労働者に期待するという向きが一部にあると言うけれど、そうした条件で来る介護就労者が考えられるだろうか。同じ仕事であっても永住許可を取得できる可能性が高くなるカナダに行く方が誰が考えても有利だろう。自分の身をフェアにしておかないで、人の助けを借りるのは、そりゃ虫が良すぎるだろう。