ほぼ足りてまだ欲 その先

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とんと縁がない

 私は東京都23区でも西の方、杉並区もさることながら、世田谷区あたりには昔からとんと縁がない。知り合いがいない。親戚もいない。世話になった人もいない。友人なんてともかくいない。用事がない。あっちにしかないというものにお目にかかったことがない。つまり必要に迫られるということがない。どこら辺だったか記憶が定かではないが、日大の文理学部の近所にそれはそれは美しい桜の名所があるのだという話を聞いて、当時の友人(今はもう全く音信がない)に夜桜見物に車で通りすぎてもらったことがあっただけである。なにしろそれまで何年に一度くらい通りかかったときに道が不案内だったからとても難儀をして、それ以来足を踏み入れたくもない。
 ところが昔のちょいと洒落た小説なんぞをひもといたりすると、やれ、経堂だとか、松原だとか、赤堤だ、豪徳寺だとかといった地名が出てくる。格好がいいではないか。通り過ぎたときにとんでもない豪邸を見ちゃったことだってある。格好いいよ。
 しかし、それだけのことなんである。なんの縁もなく、そんなに離れちゃいないというのに、そんな方面に伺うこともなく、私はこの一生を多分終えるのである。つまり、人間の体験、経験なんてこんなもんなんである。考え考え、ひねりにひねったとしても、人間は軟百年と生きるわけではないのだから、たった数十年しか生きないのであるから、そんなもんなんである・・・ということにしておこうと思う。