ほぼ足りてまだ欲 その先

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日雇い派遣 – このチャンス

 「赤木さん!どうしてそんなに大きくなったのぉ〜?」という引っ越し屋のテレビCMがあったけれど、どうやら答えは「日雇い派遣が普及したからだよ」というものらしいというのが、今日のNHK総合テレビの「クローズアップ現代」を見てわかった。
 舛添厚生労働大臣が30日以内の派遣労働を禁止するという制度を検討すると発表してからこの「日雇い派遣禁止」についてはネット上であっちでもこっちでも書かれている。
 これに対する反対意見としては、1) 企業はもう既に日雇い派遣を組み入れた構造になっているから、これを禁止したら倒産する企業が続出する、 2) 日雇い派遣で暮らしていた労働者は雇用される場がなくなって失業する、だから日雇い派遣を禁止することには反対だ、というものが多いようだけれど、これは既得権を守るためのものだというしかない。
 日雇い派遣がここまで企業ベースで喰い物にされてきたことはそのままにしておけばよいのか、ということになるとそれではどう考えてもまずいだろう。こうした論理を振り回す側の論拠は、儲ける奴が儲ければよいのであって、その自由競争に敗れてしまったものはそのまま苦しい生活のままいれば良いといっていることになる。
 運送業界は繁忙期に限っては日雇い派遣を公認しろという要望書を出すとNHKの「クローズアップ現代」で報じていたけれど、これは既得権を手放さずに弱いものをいじめて儲けようという発想でしかない。
 最低限に必要な人間だけを確保しておいて、後はその瞬間瞬間に市場から労働力を調達できる社会が最も効率がよい、と小泉—竹中—トヨターキャノンの流れ集団はいってきた。それが市場原理主義だといってきた。マスコミ全部が、広告費をばんばん大盤振る舞いしてくれる企業をよいしょ、よいしょと持ち上げて、凄い凄いと提灯ぶら下げている、いわゆるトヨタの「カンバン方式」はあちらこちらで何度も指摘されているように、すべてのコスト要素をみんな下に押しつけまくって史上始まって以来の利益を計上したりしてきた。労働者は派遣させ、発注部品は下請けに在庫を持たせてジャスト・イン・タイムで納入させ、その結果道路を倉庫代わりにしていると揶揄されている。彼らは「悔しかったら儲かる側に立つ努力をすれば良かったじゃないか、そんなことをしてこなかった奴はやられちゃってもしょうがねぇんだ」と、どこかの国家公務員のような捨て台詞を吐く。
 「トヨタ系列のマンション管理会社を見ていると次から次にどこかの会社で看板を背中にしょってその気になっていたとでもいわんばかりのタイプの営業がやってきては、現場を知らないままとんでもない態度をとって顰蹙を買っては交替していく。これまで顧客の顔を見たことがなかったのではないかという気がする」と知人がいっていたのが印象的だ。
 中には容易に「正社員を実質解雇禁止に近い形に留めておくからいけないんで、それを崩せばいいんだ」とあたかも経団連幹部のようなことをいっている“経済学者”もいる。これでは企業のやりたい放題で、山崎屋とお代官のシステムになってしまう。いや、ある意味もう既にそうなっていたわけだから、これを改革するためには企業が負担するシステムをもう一度構築し直さなくてはならない。
 しかし、それは企業だけの問題ではない。三方一両損をしなくてはそれは実現できない。法人税は高める必要がある。大企業だけが儲かってもこの国が良くならないことはこの十数年の実験でわかった。しずくが全然垂れてこないことはいやというほどわかった。労働賃金が上昇することによって商品のコストが今よりも上がり、ひいては価格があがってもそれは消費者が負担しなくてはならない。そして政治家も官僚も本来的に公平となるシステムを追求する姿勢を取り戻さなくてはならない。つまり、企業にぶら下がって美味しい思いをして現状を確保することを放棄しなくてはならないということだ。これが実現できないのならば、現状から脱却することは難しい。小泉がいっていた「痛み」というのは本当はこういうことなんだと私は思っていたからなるほど彼は本当に改革するのかと思いこんだことがあるが、そんなのは嘘っぱちだった。
 そんなことをしたら企業が国外に逃げるという煙幕をはる人がいる。逃げたいんだったら逃げれば良いんじゃないのだろうか。中国市場に逃げたら良いんじゃないのだろうか。13億とまではいかないけれど、こちらにも少なくとも1億の市場が存在する。それで成り立たないのだとしたら英国や北欧はそれで国がなくなってしまっているということになっちまう。そんなことはないんじゃないだろうか。このチャンスを逃がすとまたこの国は暗い時代を続けることになるのではないかというおそれが強いんだと思うんだけれどなぁ。