自分が犯人だと出頭した46歳の男になぜこんな事件を起こす動機があるというのだろうか。保健所に依頼して処分してしまった犬のことがずっと心に残っていたとしてもそれがなぜ厚生事務次官を殺す、という行動に出ることになるのだろうか。誰かに報復をすると発想したとしても、それがなぜ退官した「事務次官」なんだろうか。そしてどうやって自宅を探し出したというのだろうか。
こういう事件が起きるのであればこりゃいよいよ個人情報を厳重に管理する必要が出てくるという社会になってしまうだろう。すると日常茶飯事のように起きる個人情報の流出事件は厳重に罰する必要が出てくるだろう。ますます開かれない社会に向かって邁進していくということになるのだろうか。
実は彼のような生活を送ってきている人たちは今の社会にはごく普通にいて、異常と思えるほど脚光を浴びている人たちがいる一方、暮らしているだけで充分なのに、何もこれといって人に訴えるようなことができない、何もこれといって人を感動させることもできない、いやそれだけじゃなくて、何かを作り出さないといけないような気がして焦ってきてしまう結果になる人たちがたくさんいる。いや、そういう人たちがこの世の中に暮らしている人たちの殆どなのに、そうではないように誤解している人たちがたくさんいることも確かだ。無意味に人を煽って、それで金を稼いでいる人たちにももちろん罪はある。しかし、そうだからといって人を殺す理由にはならない。何も悪いことをしていない人が辛い思いをしていて、悪いことをして、あるいは良いことをしないで美味しい思いをしている人がいるのはやっぱり何かがおかしいんだとは思うけれど。
それにしてもここでもマスコミは父親を引きずり出しているのだけれど、これは必要なことだろうか。「私の命と被害者の命を取り替えたい」と父親にいわせてそれで何を伝えることができるのか。
