ほぼ足りてまだ欲 その先

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年越し派遣村

 毎日新聞が年末年始に日比谷公園で行われた「年越し派遣村」の顛末について「ドキュメント:官邸動かした派遣村(2009年1月12日)」という署名記事(堀井恵里子、田中成之、佐藤丈一、坂口裕彦、田所柳子、高本耕太)を掲載していて電子版でもこれを読むことができる。

 年が明けてからの集まった人々が予想以上に溢れた状況を、そして時間が切れる状況をどのように解決してきたかについて書かれている。これを読むと厚労副大臣大村秀章湯浅誠からの要請で動いたことがわかり、湯浅誠-山井和則の繋がりで菅直人が動いたことがわかる。民主党の党本部はテナントなんだということも知った。
 大村秀章厚労省官僚が「生活困窮者への対応は基本的に自治体の仕事です。中央政府の施設を宿泊に提供したことは戦後の混乱期もなかったはずです」と難色を示したという。さもありなん。前例のないことは彼らは絶対にやらない。やる勇気を持たない。法がなければ対応しないし、できない、と思っている。大村秀章は「自分の判断で」あの講堂を開けたそうだ。千代田区長は「休み中に急にいわれてもできない」としたが、菅直人接触した中央区の矢田美英区長は前向きに検討を開始して提供することにした。
 4日午後3時半過ぎの集会では全野党幹部による国会での決議文の文案作りが始まった。これは7日の参院本会議で全会一致の採択をした決議文になったが、自民から「このままでは路上での死亡者が出る」という部分が削除要請されたという。
 12日から村民は2ヶ所の旅館に移る。

 この記事は最後にこう結んでいる。
 派遣村湯浅誠村長は「企業はまさにこういう時のために非正規労働者を増やしてきたのだから、自浄作用は期待できない。派遣村のモデルを全国に広げたい」と話している。

 舛添要一厚労大臣が個人的な見解として「製造現場において解禁した派遣は元に戻すべきだ」と発言したとしても、湯浅誠がいうように安全弁として、バッファーとして、便利屋として要求を実現させてしまった業界が自ら一歩下がるなんていうことが行われるわけはない。
 なぜこの「年越し派遣村」に集まった人たちだけがこうした扱いを受けるのか、全国各地に放り出されている人たちはどうするのか、そしてその前に、そもそもそんな状況を自ら選んだんだからしょうがないじゃないかという「自業自得」論を展開する人たちはすなわち現状肯定を前提にいっているわけで、その状況がどれほどフェアで、どれほどアンフェアであるかを考えることができないわけだから議論の土俵が違ってしまっている。

 同じく毎日新聞が報じているのは労働者派遣における雇用責任についての改正案である。

 自民、公明両党は派遣元と派遣先の雇用者責任を強化する方向で検討に入った。派遣契約満了前に契約を打ち切る場合、再就職先のあっせんや当面の住宅確保などを義務づけるよう、労働者派遣法に盛り込む案が有力(毎日新聞2009年1月12日 2時30分)

民主党の鳩山も昨日の「サンデー・プロジェクト」で発言したらしいけれど、「(雇用者責任の強化について)賛成だ。法的措置を取らないと駄目だ。派遣先と派遣元の連帯責任を明らかにする法律を作ればいい」としているらしい。
 しかし、彼らの議論は労働者派遣法をそのままにしておいて、ということを前提にしている。しかし、それは大企業製造業と妥協しようという方向にあるということだ。依然として安全弁には違いがない。正社員に登用される要件を逃げるざるの目を持ったままでは依然として改正にはならない。
 勝間和代の「改正3年後実施」案(こちら)は今現在のこの現状を目の前にして「三年後」なんてことをいっているのでは話にもなんにもならない。
 私の結論は「前回の労働者派遣法改正前の状況に今すぐ戻す」→ 長期的には応能負担を強めて、それぞれの負担額をより増やすことに、国民が腹をくくって実現する「ワーク・シェアリング」社会の実現である。

追記:これを書いてからいつものように某在独自称ジャーナリストの女性のブログを見に行ったら全く同様に毎日のドキュメント記事を引用しておられる。「あまったれんな」記事を引用していたこの方が、これをどういう意味でアップしているのか、それがわからない。


 追記:産経ニュースも同じような記事を書いた。→ こちら

厚労省幹部も危機感を抱いていた。「厚労省の目の前の日比谷公園で、失業者が凍え死んだとなれば批判を浴びるどころか、内閣が吹っ飛ぶ(幹部)。」

これを読むと毎日新聞のドキュメントの厚労省官僚の反応とえらく異なる。