ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

昔の名前で出ています

 いや、そりゃかの国は経済的格差が激しくて、政治は財閥層に牛耳られているんだという噂は聞いたことがあるけれど、いくら何でもAFPのこのニュースには呆れた。あのイメルダ・マルコスが来年の下院議員選挙に立候補するというのだ。思わず持った新聞をばっさり落とし、ってなものだ。
 浪費癖とどまるところを知らなかった彼女を象徴するトピックのひとつは3000足ともいわれる靴の収集だったけれど、その靴が未だに残されているというのもなんともはやだけれども、それだけ今でもマルコス人気が残っているということの表れなんだろうか。私は全くフィリッピンの事情を知らないからこんなノー天気なことをいっている、という結果になっているのかもしれない。
 マルコスは大統領となって20年間、この国に君臨して好き放題だった。当時の日本の輸出企業や商社はマルコスと繋がるチャンネルを求めて群がった。なにしろフィリッピン東京裁判に判事を送り込んだくらいで、連合国のひとつだったわけで、日本から賠償借款やら様々な金が裏チャンネルに絡んで出て行った。そうした中でいわゆる中堅といわれる商社が日本の大手企業とマルコス・チャンネルを繋げる先兵として跋扈していた。つまり「マルコス帝国」は日本の政界、財界にとっても重要なポイントでその間を何かが流れる度に金も流れていった。
 そんなことを聴いていたからアキノが米国から帰国したその飛行機の真下で暗殺され、そこから1986年にコラソン・アキノが政権を執ったのがフィリッピンの夜明けなんだと思っていたら、夜明けなんて簡単に来たりしないのだった。
 貧困を貧困のままにとどめておかずに、貧困を変えていく工夫を重ねるのが政治家の役割だと思っていてもいつまで経ってもそんな兆しも見えない。
 排外主義の根底には既得利権の確保という思想が流れている。これは必ずしも金銭がらみだけではなくて、少しでもチャンスを与えてはならないという邪悪さも含まれている。フィリッピンだけの話ではない。


 唐突かもしれないけれど、フィリッピンインドネシアからやってきている看護師、介護士の研修生たちのことを考えてみたい。規定年数以内に国家試験に受からなかったら帰れ、という制度の中で彼等はこの国に来ている。はっきりいって無理だ。もちろん現場で言葉が通じない看護、介護は問題がある。しかし、現場で言葉が通じるならば試験にも通用するだろうと本気になって思っている人がこの制度を作った側、この制度を推進していく側にいるんだろうとはとても思えない。もしそうだとしたら、その人はこうしたシステム作りをする側としては必須と思われる「想像力」を全く持ち合わせていないということだろう。それははっきりいって失敗、というものだ。
 どう見ても、やりたいといっている人たちがいるからそんなような制度は作るけれど、まともに看護、介護の手を彼等に求めているという訳じゃないんだと思っているかの如きである。排外主義ではないのだ、その証拠にこうして人を導入しようとしているではないかという、一種のポーズに過ぎない。
 今のところ、一般の日本人受験者と全く同列に扱うわけでこれを「フェア」というのだという主張はある意味では間違っていないように見える。では、なんでこういうシステムを私たちは作ろうとしたのだろうか。それは非常に近い将来に私たちの国では看護、介護の手が払底するから、彼等に救いを求めているというところにひとつのポイントがある。彼等が「入れろ、入れろ」とうるさくいうから作った制度なのかといったら、それは間違っている。
 冷静に見て、言語的な問題点が解決されないのだとすると、彼等にとってはカナダや豪州に行く方がなんぼか利点が多く、しまいには永住権だって取れるだろう。難しい日本語の漢字を判じ物のようにして過去問に取り組んでいるのを見ているとそりゃおざなりに考えた制度のように思う。しかも、カナダや豪州は多文化共生社会を仮にも標題に掲げているし、その為の諸制度が構築されているし、何よりも周囲が違和感を持っていない。
 この制度で利益を得る人というのは一体誰なんだろうか。日本の受け入れ機関にしてもひょっとしてうまく資格を取れる人が出たらその時には人手を確保できるかもしれないけれど、多くの場合、時間と人出と費用が大いにかかって負担になっている。
 現地の派遣窓口をやっている民間機関が儲かっているのだろうか。そこからどこかに何かが動いているのではないのか。
 排外主義運動をたきつけている人たちが本当にこの国の将来を考えているのだとしたら、それは鎖国して、昔誰かが書いた「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とか「ノーと言える日本」なんて本を後生大事に抱えて、滅多に人に会わない汚い街の片隅で野垂れ死ぬということにでもなる、そんな将来だろう。
 本気で考えないとね・・・。