ほぼ足りてまだ欲 その先

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留学

 留学する若者が日本に限ってどんどん減っていると聞く。もったいないなぁ。世が世なれば行きたいなぁ。今からじゃもう遅い。しかし、あの頃の自分はそんなこと考えもしなかった。なんでか。自立していなかった。自分で自分のことを考える、という行為に耽るということがなかった。沈思黙考しなかった。愚かだった。なんといわれても良いから自分がやりたいことに邁進すれば良かった。挫折してでも良いからその道を取れば良かった。だから、こんな話を聴くと、実に何とももったいないと思うのだけれど、その今の若者も昔の私と同じだろうか。それとも彼等は考えた末にこうなったのだろうか。

追記110111

 昨日の日本経済新聞の社説にこう書かれていたのだそうだ。

若者たちがもっと活躍する社会に 2011/1/10付
 今年の元旦を20歳で迎えた新成人は124万人。最も多かったのは団塊世代が成人した1970年の246万人だから、ほぼ半減したことになる。高齢者が苦しむような国は悲しいが、若者の声が小さくしか響かない国も未来は明るくない。どうすれば若者たちが活躍できる社会になるか。真剣に考えるべき時だ。
 今の若者は内向きだといわれる。だが、前慶応義塾長の安西祐一郎氏は近著で「当たっていない」と反論する。卒業後に留学すると帰国後の就職に困る。在学中の留学も就職活動の長期化で難しい。留学などしていられないと学生は嘆くそうだ。
 若者が海外勤務を避ける一因も、企業内での処遇にあるといわれる。海外で得た知識や経験を生かせないような状況が若者の萎縮を生んだとすれば、企業の責任は大きい。
 いまの若い世代はインターネットとともに育った。米国の同世代は調査能力が高く、組織や社会にスピードと透明性を求めるという。日本の若者も年齢や所属の違いへのこだわりが小さい半面、組織の壁を越えた人脈づくりはうまい。携帯電話やパソコンの活用術にもたけている。
 これからは、現在の20代の発想や行動が社会の標準になっていくかもしれない。上の世代は、若者の上下関係の意識が薄い、帰属意識が弱いと嘆くのではなく、硬直的な組織文化や不合理な面を改善する起爆剤として、情報発信や外に開かれたネットワークづくりなど、若い人たちの特性をもっと生かすべきだ。
 若い世代には社会貢献への関心が高いという意外な側面もある。統計数理研究所の調査で、2008年までの10年間に「人のためになることをしたい」割合が50歳以上で減る一方、20代と30代では大幅に増えた。
 社会貢献型の外国債券、寄付付き商品などのヒットが、実際に若い世代から生まれた。若手社員に権限を与えると、年長者の気づかないアイデアがもっと出るだろう。目の前の業務はどう社会に役立っているのかを職場で丁寧に説明し、若者の仕事への意欲を引き出したい。
 政治ももっと若者の方を向くべきだ。日本青少年研究所の2年前の調査では「私個人の力では政府の決定に影響を与えられない」と思う高校生は8割を超した。この比率が4~5割の米国、中国、韓国と比べ、あきらめの意識の強さが目立つ。
 若年人口が減ったうえ、多くは都市に住む。選挙権年齢の引き下げや一票の格差の是正などで、未来を担う世代の声を政治に反映しやすくすることも、年長世代の責務だ。

 若い世代は大きな力を秘めている。それを生かすも殺すも上の世代の課題だという論調に読んだ。その通りで、これは昔から全く変わっていない。
 若者達が外に出て行かなくなった根拠のひとつは企業が外国で学ぶ力を生かそうという体制にないことが原因だという、NHKの次期会長就任が危ぶまれている安西祐一郎の言葉を引いている。
 ちょっと待って貰いたい。日本の民間企業が大所高所から日本の教育制度を見渡した企業経営をしなくなったのは昨日今日のことではないはずだ。日本の企業(といっても大企業だけだけれど)は日本の教育機関は企業で使える人間を育てる教育をしていない、いやしないでくれて結構だと思ってきた。下手な知恵のついた奴はいらない、むしろ何も考えなくてまず「はい」という奴が欲しいと思ってきた期間は随分あったというのが実情だっただろう。それでも海外への留学生はごまんといたじゃないか。
 研究者として研究の実績を重ねようとしたら海外に出て行きたい思う若者はたくさんいたはずだ。まさかそんな研究者を目指す若者すらいなくなっちまったということなんだろうか。ましてや企業に入ってからも海外勤務を望む青年達が減少している点についての説明にもならないような気がする。
 確かに大学3年生からもうすでに就職活動に専念するしかない状況に学生を追い込んでいる日本の民間企業には大いに責任がある。これは明確に間違っていて、日本の国の将来を考えた企業経営という観点からは大きく逸脱している行為に他ならない。それを規制できない霞ヶ関もさることながら、日本経済新聞が追求するべきはこの点で、彼等にはより多くを訴えるべき使命がある。これは同意見だけれど、それに加えてやっぱりなにかメンタルな面での大きな違いがありはしないか。

そもそも「内向きが嘘」

 RECRUIT AGENT(こちら)に書かれた「誤解」

文部科学省の発表データによれば、日本の総留学生数は、図表②に示すとおり、2004年にピークとなり、その後微減傾向だが、直近でも7万6,000人超。図表②ではピークだった1997年よりも20%以上も増えている。

文部科学省「わが国の留学生制度の概要」から
日本は北米・アジア・ヨーロッパなど、多地域に留学生が分散している。そのため、アメリカへは減少

  • ハーバード大学への日本からの留学は、大学院が昔から圧倒的に多数であり、その人数は今でも100名を超えている。
  • 学部への入学は最盛期でも20名弱であり、現在3〜4名と減少しているのは確かだが、1名という年はない。
  • ハーバードは留学定員があり、そのため、韓国・中国・インドの留学生が激増した昨今は、日本人が割を食っている。
  • その玉突きか、昨今はイェール大学への日本人入学者が増え、今年は7名と過去最高となっている。

JMA(社団法人日本能率協会)が行っている新入社員アンケートで、海外勤務希望者が減っている、というデータを出す人がいるかも知れない。しかし、このデータさえ、よく見れば(1)減少幅は10%程度。(2)15年前と比べて、女性新入社員比率が高まっている。(3)海外渡航経験者が昔より多いため、海外勤務の価値が減った。(4)就職氷河期を経験して入社するため、贅沢を言わない風潮がある。などの諸理由が考えられる。
 しかも、このアンケートの結果を見ていくと、「強く海外勤務を希望する」という層は増えている、という矛盾も孕んでいる。つまり、ここでも安易に「若者は内向き」とはいえないことがわかる。

 どうだ。これまで風雪で聴いてきた話とは真っ向から対立しているのである。私は一体何をこれまでに聴いてきたというのだろうか。
 どちらが正しいのか、日経によると安西祐一郎もこれは知らないらしいということになるか。