鶴見俊輔の本で、2002年に出た本のことだ。私はもちろん2006年に出た文庫本で買ったのだけれど、実のことをいうと、ずっと積ん読状態だった。ついこの前から電車に乗るときは必ずもっていて、老眼鏡に掛け替えてはつまみ読みをしている。23人の著名な人たちについての鶴見俊輔の回想を短く書いているのだけれど、文章の巧さもさることながら、鶴見俊輔の付き合い方の面白さも垣間見られるし、それぞれの人たちの思わぬエピソードが発見できて、面白い。なんですぐに読まなかったんだろうかと後悔する。
武谷三男のところで、武谷が死ぬ直前の2000年3月20日に出た武谷の「危ない科学技術」という本を取り上げて、鶴見がこう書いている。
例えば放射能を深さ50メートルの地下に埋めて、それで千年は大丈夫というが、管理する次の世代はそれで納得するだろうかと問う。一時しのぎで原子力を使う今のやり方への批判である。むしろ、今のエネルギー大量消費社会から、別の形に向けてゆっくりと移行することを考えたい。そうすればしばらくは石油で間に合う。石油の埋蔵量がどうこういうのは、原発推進者による市民への脅かしだと、武谷さんはいう。
今盛んに議論されていることにそのまま当てはまる。
また、金達寿を書いているところでは、こういうのもある。
今の「グローバル」は、につめたところ、アメリカにならえ、ということになるので、私には眉唾物と感じられる。
まさにその通りだ。
小泉文夫のところでは彼が医学部進学を止めたときに父親から感動され、そのことから彼が11歳年上のソプラノ歌手と結婚する自由を得た、というあたりはびっくりしたし、小泉を今頃改めて思い出したくなった。
- 作者: 鶴見俊輔
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/02
- メディア: 文庫
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