ほぼ足りてまだ欲 その先

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評伝

 評伝、自叙伝、Biographyというジャンルが日本の本屋にはない。多分「ノン・フィクション」にカテゴライズされる。しかし、米英豪といった国(自分が日本語と英語しかわからないから、他の国の本屋に行ってもわからない)の本屋には膨大な量の書籍がこの分野にならんでいる。しかし、それに相当するであろう書籍は日本でも勿論出版されているのだけれど、まとめられる様子は見えてこない。
 なぜだろうかと私は長いこと思ってきた。
 今日の保阪正康の話では面白いことを聴くことができた。彼は東條英機に関する書籍を出版している。

東條英機と天皇の時代 (ちくま文庫)

東條英機と天皇の時代 (ちくま文庫)

 
 保阪は東條英機の妻にも、娘にも話を聴きたいと、聴きたい質問項目まで羅列して、何十回と手紙を書き続けたのだそうだ。そして、そのインタビューが実現を迎え、彼はそれを書くことを伝えていたが、東條側から、原稿を見たいという要請があったので、引用するコメントはお見せするけれどそれ以外については断ったのだそうだ。すると東條側からは折角協力をしたのにもかかわらず誠意がないと指摘されたらしい。
 保阪がいうには、とはいえ、なかなか本人の顔を思い浮かべて書けないものがあるのだけれど、それも含めて日本にはこうして「公」と「私」というものが存在しない。どうしても事実を事実として捉えられない。良いも悪いも事実を事実として、公的な存在について羅列されるべきなのだ。
 それができないから、必要以上に肩入れをして、書き物としてふざけたものに成り下がってしまうのである。
 日本経済新聞の「私の履歴書」なんて美味しいことしか書かれていないのだよ。某ゴースト・ライターの仕事を見ていてよ〜くわかった。
 そういえば、保阪正康もかつてゴーストライティングをやっていたことがあるんだそうだ。