ほぼ足りてまだ欲 その先

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多分わかっていない

 2011 年6月14日 に社団法人日本経済団体連合会が発信した「グローバル人材の育成に向けた提言」というものがあって、twitterで超有名な発信者となっているMay_Roma氏がこれを取り上げていたので知ったのだけれど、その中身は十年一日の如き内容で、そんなのは片っ端からこれまでどこの企業も嫌がっていたことばかりだ。そんなに簡単にみんな180度真っ逆さまな方針をとることができるのかと人ごとながら大いに気になる。
 その中に思いっきり突っ込みたくなる部分がこれだった。

(3)大学に求められる取り組み
1 リベラル・アーツ教育の充実
 グローバルに活躍する日本人人材は、異なる文化や価値観への関心を持つとともに、日本の文化や歴史、哲学などの学習を通じて、物事を考察する際の基礎となる思考力を身につけることが求められる。大学におけるリベラル・アーツ教育の拡充を通じて、文科系、理系等の専門科目に捉われず、幅広い視野や、 基礎的思考力を身につけさせることが重要である。

 そうか、それでどこの大学も(わが母校も正にその典型だけれど)「リベラル・アーツ」という言葉をカタログやHPにやたらとちりばめている。多分彼らはこの言葉を正確には把握なんてしていないだろう。いや、この提言を書いた経団連だって正確に把握しているかどうかははなはだ疑問だ。
 本当にリベラル・アーツを追求せよというのであれば、それはたかだか4年間の教育ではろくなことにはなり得ないはずだ。というのは全く専門領域を定めずに、ここに提言されている様に、専門の前過程となるところで関心のある領域を学生がある程度自由に選択できる状況でなくてはならない。そして4年間それを繰り返す中で自分の専門領域を絞っていって大学院の2年間ないし4年間でそれを極めていくというのがその理想的姿であるはずだ。だから、「リベラル・アーツ」をとことん追求するのであれば、それぞれの単位の中で抱えることの出来る学生の数が数千の単位に達することが出来るわけがない。まさに、かつての日本の高等教育はその姿だったはずだ。当時の学生の数を考えてみると良い。とても今の進学率になるような教育機関は数の上でも実現できない。
 だから、経団連のいっていることはこれだけでも絵に描いた餅にしか過ぎないのだということがすぐわかる。こういう事を見極めることが出来る力を備えるのには確かにそうした教育が必要なんだろう。