ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

「老いてさまよう」

 毎日新聞認知症身元不明者に関するシリーズのタイトルである。
 先日、認知症で線路に立ち入ってしまい、電車にはねられた高齢者の家族に鉄道会社が求めた賠償請求が裁判で認められたという判決があった。ここまで寿命が延びたことによって高齢となって認知症を患う人の割合は以前とは比べものにならないくらい増えている。
 そして徘徊の末に家族から離れてしまい、自分のこともわからずに保護されるという人の存在が段々問題化し始めて来た。草の根でこれらの人を支えられた時期はもう通り過ぎているような気がする。なにしろこれからやってくるであろう圧倒的な高齢化時代にはその数は見過ごすことはできないことになるだろう。しかし、日本社会はそれを支える方向には動く可能性が少ない。なにしろ「やる、やる」といいながら弱者を支える方向に体制が動いた実績は殆どない。
 今度の賠償請求訴訟における判決はその最たるもので、これからこの種の事故は看過できない数に上る可能性は明確だ。その時にはこの判例は揺るぎないものとしての影響を与え続けることになるだろう。

毎日新聞の調査では政令市と県庁所在市、東京23区の計74自治体で2008年度から13年度(2014年2月までの集計)に少なくとも546人が身元不明で緊急一時保護されたが、保護前の生活状況を把握できたのは11区132人と16市174人の計306人。このうち住所地以外で保護されたのは11区75人、12市42人の計117人だった。(毎日新聞 2014年04月23日 東京朝刊)

 先日毎日新聞のこの特集で兵庫県の施設に暮らすある男性がこうして保護された人のひとりだったのだけれど、この度ようやく家族が見つかって、本人の年齢、名前がわかったと伝えている。
 この記事の中で気になったのは、家族が捜索願を警察に出していたにもかかわらず見つからなかった。
 同紙によると「警察は行方不明者届があった場合、氏名や身体的特徴などをデータベースに集約している。だが、顔写真は登録されない上、氏名が分からないと事実上検索できない」という。「大阪府警は名前を言えない人を保護すると、顔写真や着衣などの情報を載せた「迷い人照会書」を別途用意して他の警察本部に送り、該当する行方不明者届がないか確認を依頼」するのだという。つまり、未だにシステム化されておらず、現場の気炎に任されているということになる。
 今回のケースでも家族が捜索願を出した兵庫県警の行方不明者届は「青色のジャンパー、ブルーのパジャマ、グレーズボン、黒の運動靴」だったのだけれど、大阪府警に残されている男性の保護状況の記録は「青色ダウンジャケット、灰色スウェットズボン、黒色運動靴」だった。これを見たらかなり似通っている。
 しかし、実際は手元にある管内から上がってきた行方不明者届ファイルとコンピューター画面に表示される照会書の内容と照らし合わせ、確認するという手作業。未解決の行方不明者届は2013年分だけで313件、ファイルは10年分に及ぶために確認できなかったのではないかと報じている。
 今時の情報時代にひとつひとつ手でファイルを繰りながらやるんじゃ、担当者の忍耐が事切れてしまうのは想像に難くない。データーベース化されていないなんて、今時ビックリだ。テレビのC.S.i.を見ているインパン人にはにわかには信じがたいのだ。
 データーベース化が進めばもっとこうした悲劇は少なくなるだろう。じゃ、システムはいつ変えなきゃいけないのかといったら、「今でしょ!?」