ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

神保町

  かつてより、死ぬまでに一度は行かなくてはならないところだと肝に銘じていたのだけれど、偶々意を決して行ってみると日曜と水曜のお休みの日だったりして、まったくタイミングが合わなかった店が神保町にあって、もう何年も過ぎてしまっていた。
 今日だってたまらんほどの夏の日差しの中だったのだけれど、日陰はからりとしていて、何となくうきうきしてきたので思い切って出かけた。
 銀座線に乗れば良いのに、うっかり違う方向に歩き出してしまって、上野からわざわざ銀座線に乗り換え、半蔵門線で神保町へ。銀行のATMに寄り道して、反対側に渡る必要があるんだけれど、あまりの日差しにしばし日陰側を歩こうとすると、どうしたって古本屋の軒先を歩くことになる。すると、どうしても目が本のタイトルをなぞり始める。いやいや、今日は本を探しに来たんじゃないんだと自分にいい聴かせるのだけれど、どうしてもそっちに行ってしまう。

張学良の昭和史最後の証言

張学良の昭和史最後の証言

10日もあれば世界一周 (光文社新書)

10日もあれば世界一周 (光文社新書)

 結局なんだかんだといいながらこの三冊を入手。
「世界一周」は忙しい人が世界一周をするんだったらという前提の話で、私のニーズには全く合わないけれど、とにかく先日本屋で手にして、ちょっとずれているからいらないとはねたのだけれど、半額ならと。
 斉藤茂男は高度経済成長期の資本主義のゆがみを鋭く指摘している。私たちはその上に乗っかってやりたい放題だったことに気がつかなかった。そういうもんだと思っていた。
 張学良はテレビを見たような気がするのだけれど、もうすっかり忘れている。今読む必要があるとすっと手が伸びたし、本の背表紙が確かに私を呼んでいた。
番組は多分NHKスペシャル「張学良がいま語る〜日中戦争への道〜」だと思うけれど、NHKオンデマンドで検索しても引っかかってこない。全く有料といいながら、役に立たない。
 神保町で昼飯を食うということになると、冬だったらまずキッチンジローの牡蛎フライや小学館ビルの地下にあった七條を思い出すのだけれど今牡蛎フライじゃないだろうし、七條は小川町に行ってしまったし、どうするかなぁと思いながら裏を歩いてみたら「へぎそば」の文字を見つけたので入っちまった。へぎそばだけでも良いんだけれど、一応天ぷら付きが良いなと「へぎ天」を発注。
 つるつるしたへぎそばの感触はとっても気持ちよくて、お、こりゃ良いじゃないかと思ったのとは裏腹に、天ぷらの全然旨くないことおびただしい。それでも全部喰っちまう自分は随分エラいというか、けちな奴といおうかだけれど、もったいないから完食する。
 昔高校の同級生だった男は自分がまずいと思うといても立ってもいられなくなって、すぐさま飛び出すという奴だった。彼と食い物屋に行くのはつらかったっけ。その代わり彼は自分が一度気に入ると、とことん通う。洗足池の自宅から乃木坂の珈琲屋までわざわざ車でコーヒーを飲みに行くような男だった。今どうしているんだろう。もう14-5年逢っていない。
 半分躊躇しながらようやく足を踏み入れたのは「金ペン堂」である。ペリカンのペン先がFを欲しくて、ずっと逡巡していた。先日某所でM105という細身のペン先Fを入手したのだけれど、どうも書き味に満足感が得られず、やっぱりどうせ買うなら、安くはないけれど、一本一本、ペン先を確認して売っているという噂で定評の高い「金ペン堂」じゃなくちゃだめだと確信を持ったのだ。ここでも私はもう20-30年を無駄にして結果として高いものを買っていることになる。
 根っからのケチな私は何かを始める時に、必ず心の声が聞こえてくる。「そんな高いものを最初から入手して、もし、すぐに挫折したらどうするんだ、その気になってからそっちに手を出しても遅くないだろう」と聞こえるのだ。だから、安い、満足感がそれほどない、やめてもかまわない程度のクラスから始め、飽き足らなくなって本物を手にし、気がついたらとんでもない遠回りをして、結果として随分高いものについている。
 スキーだって、テニスだって、キャンプだって、フライフィッシングだって、ゴルフだって、みんなそうだった。そしてみんな10年ぐらいで熱が冷めてきた。
 万年筆もその中に入るだろう。鉄ペンも今や10数本になっているし、国産万年筆もあれとこれ、ペリカンもあれとこれ。
 しかし、事ここに及んでも「ペリカン・コニャック」にしようと思っていた。ところが持たせてもらって驚いた。むちゃくちゃ軽い。これでも良いかもしれないとは思ったんだけれど、パーカーの何とか、Watermanのなんとかを持たせてもらうと心地よい重量感があって、お!これは良いかもしれない!とぐっときてしまった。いやいや、いかん、いかんと。Pelicanが欲しかったんじゃないか、とここで変な気持ちが出た。結果としてPelicanのスーベーレン400の金黒にしてしまった。Watermanのブルーブラックをサービスしていただいた。大満足なのだ。なのだけれど、持たせてもらったあのWatermanに気持ちが残ってしまった。これはまずい。しばらく400を使いこなす。