ほぼ足りてまだ欲 その先

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きっかけ

 本当のことをいうと、私が父親とほとんど口をきかなくなったきっかけは高校に入ったばかりの頃の夕飯時の出来事がきっかけだった。
 毎晩わが家では午後7時にNHKのニュースを見ながら夕飯を食べているのが昔からの習慣だった。ほとんど夕飯時に父親が家にいたことがないというくらい、彼の職場は忙しかった。なぜ忙しかったのかというと、彼の職場の船舶修繕工場は米軍専用埠頭のすぐ傍にあって、当時はベトナム戦争から戻ってくる米軍関連艦船の修理が忙しかったらしい。陸上の走行機器関連もかなりの数が日本で修理されていたそうで、当時のそうした産業界は朝鮮戦争時に次いで、戦争特需で忙しかった。
 うちの父親は日頃はそうした考えの持ち主ではないのだけれど、かてて加えて冗談がヘタックソで、ベトナム関連のニュースを見ながら「これで日本は儲かるな」といったのだ。
 それを聞いた私は俄然父親を許すことができないだけでなく、自分がそうした構造化で禄を食んでいることに堪えられなかった。決然として食卓を立ったのを覚えている。
 その後、それからの10年近く、私は父親に対して心を許さなかった。結婚前に父親からもらった手紙には「おまえと俺はこれまで断絶状態だった」と書いてあった。親子づきあいの下手な父親だったのだ。
 親づきあいの上手い子どもでなかったことも事実ではある。