ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

こんな本

  • 「旅はゲストルーム ー測って描いたホテルの部屋たち」浦 一也、光文社知恵の森文庫

旅はゲストルーム (知恵の森文庫)
 ホテルの部屋を俯瞰で描くといったら、まず最初に思い浮かぶのはあの妹尾河童さん。彼の絵は大好きだ。どうしてあのように描けるのかがわからなくて、彼の本を見てハタと膝を打ち、やってみたことがある。
 この浦一也さんは芸大のインテリアデザインを出た方で日建設計(この本の著者略歴では誤植になっているけれど)で設計業務に従事。ここに掲載してある絵はすべて1/50にメジャーを使って測定したところから描き起こして、水彩で着色してある。またそのセンスが抜群で見ていてとても楽しい。世界各地の著名なホテルの部屋を描いてあるだけでなくて、そこから見える景色がこんな具合によいのだ、としてあったり、著名なホテルで同じように客を装ってみている中でも同業者はかぎ分けられるようにわかってしまうというような話は興味深い。同じ業界に働くものには似通った匂いがあるというのは私も思ったことがあって、職業を聞いて思わず絶句したことがある。

  • 「にっぽん俘虜収容所」林 えいだい著、明石書店 1991.8.15

「1942年6月25日、陸軍大臣東条英機は、新任の俘虜収容所長会議で次のように述べた。”我が国は捕虜に対する観念上、その取り扱いに於いても欧米各国と自ら異なるものあり、人道に反せざる限り、厳重にこれを取り締まり、且つ一日と雖も無為徒食せしめることなく、その労力特技をわが生産拡充に活用するように”」(序文より)
 よく知られている泰緬鉄道での使役、日本国内での使役に多くの戦時捕虜が使われた。彼らの収容所における公的写真、捕虜自身の手によるスケッチ等を多く取り入れ、戦後ある捕虜が日本を訪ねて当時の人々に会う姿をもたくさん掲載している。惜しむらくは系統立った説明にかける点であろうか。資料として存在しているグラフィックをただ並べただけ、という印象がしてしまうのが惜しい。

 戦後米国によってとらえられ国家反逆罪として起訴された「帰米二世」川北友彌を語るノンフィクション。アイバ・戸栗は同じように反逆罪に処せられたが彼女は帰米二世ではなく、ごく普通の二世として叔母の病気見舞いに来日して開戦され、帰ることができなくなったわけで、事情は異なる。

  • 「流言・投書の太平洋戦争」川島高峯(かわしまたかね)著 講談社学術文庫1688 2004.12.10 (読売新聞社刊「銃後 流言・投書の「太平洋戦争」」1997.08が底本)

流言・投書の太平洋戦争 (講談社学術文庫)
 これは著者の博士論文を一般向けに書き改めたものであるとしてある。この作業には大いにエネルギーがいったであろうことが想像されるが、多分相当に楽しかったのではないかという想像もしてしまう。著者は40代になったばかりの大学助教授であり、若い人たち先の大戦を理解してもらうことについて考えていることが伺える。この若さで良くこれだけの発想を持って当時の建前の文と本音の文を調べ上げてここまで書き上げたものと感心した。次々に何も知らないこの戦後生まれ世代に新しい話を伝えてくれる。「スパイに脅かされないためには知らなきゃいいんだ」という”三猿主義”にはびっくりさせられる。

 戦後すぐに日本人5千人もに面談調査を行ったアメリ戦略爆撃調査団は「戦意」を”日本人がその指導者にしたがい戦争に勝つために労働し、犠牲となろうとする意欲と能力を示す諸要因を総合したもの”という視点から分析していたが、”戦中の日本人にとって「意欲」とは、しばしば、「能力」とはかけ離れた世界でも成立し得る観念であった。つまり、精神力である。(中略)ひらすらその「やる気」だけで克服しようとする気持ちの力である”

これには、参った。戦後生まれはいつでもこういわれて反発していたっけ。いつまでもこういわれていたような気がする。「君には意欲が感じられない!」TVタックルに出てくる三宅某が好きそうな言葉だ。

  • 「Unbroken Thread: An Anthology of Plays by Asian American Women」Roberta Uno著:これまで名前だけは見たことがあるんだけれど、舞台はもちろん見たことがないし、筋書きも読んだこともないVelina Hasu Houstonの「Tea」が載っているらしい。もちろん翻訳本はでてない。Amazon.comにはusedが載っている。10ドルくらい。どうしようかなぁ。個人情報抜かれちゃわないかなぁ、なんていったら営業妨害か。