ほぼ足りてまだ欲 その先

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政治犯の解放は

 鶴見俊輔小熊英二上野千鶴子に語っている本(「戦争が遺したもの」新曜社)の中に、そういわれてみればこれまで考えたことのないことが書いてあって唖然とした。それは、8月15日に玉音放送があって大日本帝国が敗れても、そして、9月2日、東京湾に浮かぶ戦艦ミズーリー上において降伏文書に調印がされても、それまでの政府によってとらえられ獄中にあった政治犯、思想犯は解放されなかった。ならばいつ解放されたのかといえばなんと10月4日になって占領軍の命令によってようやくであったというのだ。
 当時獄中にあった羽仁五郎が1968年「思想の科学」で鶴見俊輔と対談をした時、羽仁は「何故駆けつけてきて鍵を開けてくれなかったのか」と語ったのだそうだ。鶴見俊輔は(俺はやらないが)きっと誰かそういう人がやるだろうと思っていたのだそうで、この一言を言われて内心忸怩たる思いがしたのだそうだ。
 山田風太郎は10月6日に学校の三年生が演じる大松座での「国定忠治」のポスターを10月4日に4枚描いたとしてある。ところがこの「国定忠治」が大入り満員、あふれんばかりの観衆が押し寄せ、建物の崩壊をすら心配したとある。それほど娯楽が町にないということであるらしい。今では想像すら能わず。