ほぼ足りてまだ欲 その先

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核医学-技術・時間とコスト

 先日、PET(Positron Emission Tomography)による画像診断の話をテレビで最新技術として話題になっていた。この診断技術に保険が適用されるようになったのは2002年になってのことである。サイクロトロンと呼ばれる機器を使ってポジトロンという陽電子を取りだし、ブドウ糖や水に非常に半減期の短い放射性同位元素でマークを付け人体に取り込んでその挙動を画像にとるというものである。活性を見ることができるので、MRIやCTと併用して癌を発見することができる。しかも微少な腫瘍細胞を発見できるので、早期発見が可能。
 10数年前から癌発見の切り札として核医学界ではその活躍が期待されていた。内外のメーカーも保険適用を待ってその技術を高めてきた。しかし、ほんとうになかなかこの技術に医療保険の適用が実現しなかった。そのおかげで2002年の保険適用が実現するまでの間に、息切れするメーカーや技術者がぽろぽろとこぼれていった。ほんの少しの期間、この分野を覗いたことがあったけれども、技術を維持し、向上し、完成度の高い商品、サービスとするのにはこんなにもコストがかかるものかとびっくりした。この辺の事情をしっかりと評価することが技術を育てる、ということかと思う。
 オーストラリアという国には国立の技術研究所が存在する。この研究所がカバーする分野はほぼすべての領域にわたる。食品から鉱業生産から環境とありとあらゆる研究をしているといって良いかとも思う。しかし、この技術開発は「生産」あるいは「実稼働」を目処に行われる。国内外のメーカーや商社に声を掛け、現在開発中の技術を説明する。そして開発費の拠出を依頼する。途中でこれ以上の出資をしてもこの技術は完成はしないだろうと思えば開発費拠出を止めるところもある。途中から肩代わりして完成を目指す、そんなスポンサーも現れる。とうとうどこからもスポンサリングが得られなくて挫折した技術もあるらしい。研究所の中に実際に開発研究を行っている技術者もいれば、こうしたスポンサー企業を捜して歩く営業担当もいるのである。そうして働く技術者には多くの移民がいる。私がであった中にもロシア人技術者が、スペイン人技術者がいた。面白い開発の仕方だと頷いた。残念ながら私が仕事した会社では「自分で開発しないと沽券に関わる」と思っておいでの技術者の方が多く、共同で開発するところまでいかなかった。しかし、秘密保持契約があってつまびらかにされなかったが、日本の商社やメーカーが出資している技術開発がいくつか進行していることはうかがえた。