ほぼ足りてまだ欲 その先

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NHKスペシャル「ワーキングプア-II」

 無年金の高齢者がかなりの数に上っている。これは今の若者の明日の姿になる可能性がある。
前回の「ワーキングプア」放映後1400通にのぼる反応が視聴者から寄せられたそうで、これは相当な反応といっても良い。上記の生活保護母子加算の話も出てきた。
 31歳の福島の女性は小6と小4の息子との三人家族。昼は建設会社の事務のパートでこれが三人になってから8つ目の仕事。一旦家に帰り、子どもと食事をしてからコンビニの本部で各店の弁当発注のとりまとめパートをやる。家に帰るのは午前2時。この二つの仕事で月収は18.5万円。児童扶養手当がこれまでの月4万円が半分に削減されるという。行政では資格を取るための援助があるというが、以前に介護福祉士の資格に挑戦しようとしたが(この仕事も決して高給ではないのだけれど)そのために学校に通う余裕がない。これをして「自助努力が足りない」といえるのだろうか。「大丈夫じゃなくてもやるしかない。10年願張れば子どもが自立できるだろう。それまでは責任を果たす」とご本人は云う。
 23歳の北海道の女性。10年前に離婚した父親はそれ以来鬱となり、今では悪化している。町立病院のパートで調理を担当。しかし、町が調理の仕事を民間に委託したので時給も下がり、月に8万円の収入にしかならない。妹も同じ仕事をしており、会わせて16万円がこの三人家族の収入である。人口2000人のこの町にはほとんどの人が農業従事者で若い女性には仕事がない。彼女は高校卒業時にはトップの成績で、美術のセンスもあり、専門学校に行ってCGをマスターしたかったが、お父さんが病気で失職したために学費が払えず断念した。彼女は一念発起して調理師の免許を独学で取得したものの、会社の評価は時給の10円増しだけだった。資格を取ってもその資格を生かす職場そのものが存在しない。それでも負け犬なのか。
 57歳の岐阜の女性。8年前に死んだ夫とやってきた縫製業者から受けるアイロン仕上げの仕事を続けてきたけれどとうとう月収7万円にまで落ち込む。「やれればやりたいがもうどうしようもない」助産師でひとり暮らしをしている娘と同居の道を選ぶ。「甲斐性のない親で悪いなぁ・・・」中国から入ってきたのは安い製品だけではなくて安い労働力としてたくさんの研修生・実習生が入ってきた。中には彼らに時給200円しか払っていない雇用者もいる。しわ寄せは彼女のような末端の零細業者のところに及ぶ。
 同じように仕上げアイロンプレスを生業としている、56歳の夫と58歳の妻の組み合わせ。これまでの手間賃は一着約100円だったけれど、今ではそれが半分以下になってきてしまった。2004年に568万円あった売り上げが今年は300万円に届かない。経費引いたら暮らせない。夫は一度脳出血を患っており、仕事はしているがもうバイトに行かれない。娘は管理栄養士を目指して大学に進学する。奨学金やアルバイトで工面していくんだとは云ってもそうはいかない。妻はこれまでの特養ホームでの朝食の調理に加えて、中国人労働者の研修機関の台所での調理のアルバイトも増やす。しかし、娘の進学費用に200万円の借金に手を出した。「4年間はとにかく頑張って娘を卒業させる。」こうした永年培ってきた技術に対価は支払われない。とにかく安ければよい。
 80歳の男性。75歳の妻と暮らす。夫は昭和30年代からやってきた工務店の経営者だった。国民年金保険料を若い頃に払わなかったことがあったから5年が足りず年金が出ない。「当時は年金貰って長生きするなんて望みませんでした」と仰る。生活保護を受けるか受けないかという話ではない。年金保険料をこの方たちが払っていたとしても、その年金を貰うことすら、この世代の方々はスティグマに陥る人がいるのだというのはどうやら本当のようだ。お上にご迷惑をおかけしてはならない、という所だろうか。しかもこのご夫婦には【もしもの時のために】貯めてある70万円があるのだそうだ。しかし、それ故に生活保護の対象とはならない。で、このご夫婦はアルミの空き缶を拾って生計を立てている。それでこれまでは月に5万円ほどの収入になった。離れて暮らす二人の息子がいるのだそうだけれど、それぞれ孫を抱えていて忙しそうだ。「親は子から貰わずにギリギリまで生きて、そして死にたい」と仰る。無年金高齢者は全国で40万人にもなるのか。公園清掃パートもやったが、希望者が増えてきて年長者から順送りに遠慮をするようになり、身をひいた。アルミの缶拾いはどんどんライバルが出てきて上がりももはや期待できない。「身体が動かなくなればそれまで、ですねぇ・・・。」
 76歳の男性は2004年から新宿で公園清掃をパートでやっている。6万円の年金と8万円の公園清掃報酬で暮らしを立てる。少々の体調不良でもでる。妻はアルツハイマーを病んで特養にいる。その特養の負担が6万円かかる。かつて内装工事の仕事をしていたが35坪の借地に自分で家を建てたのだけれどとても暮らしていけないと7年前に手放した。それ以来妻はアルツハイマー病を発症した。その特養も今年から負担が部屋代、食事があるので1万円負担が増える。もう自分が倒れたら親戚を頼るしかないだろう。残りの8万円の収入から夫は少しずつだけれども貯金を始めた。妻が生き残った時のために、である。
岩田正美:日本の母子家庭は世界に類を見ないほど働いている。資格を取ろうとする人たちのためにはその間の所得保障があるべきでしょう。雇用の側を如何に規制していくのかという点が課題ではないだろうか。働いても生活が成り立たないというシステム自体がおかしい。社会の力が失われている、そうした「社会」を良しとするのかどうか。
八代尚巳:何よりも景気が回復しなくては意味がない。長期経済停滞が甚だしき失敗である。自営業とは経営者である。ビジネスをする以上、需要を求めて自分から動いていくべきだ。昔のままの状態にいて成り立つように支援してくれと要求するのは間違えている。所得の再配分を重視するべきなのである。健全な市場主義を導入しなくてはならない。つまりセーフティネットの完備した競争社会が理想だろう。
内橋克人:研修生を労働者として使っていくということは日本の労働経費をどんどん切り下げていくと云うことになり、それによって日本の労働者の処遇を落としてきている。仕事をしても報われないとそれは意欲を斬り捨てていくことになる。これでは勤労が美徳だった文化を捨てさせていると云うことだ。これからはきっと働く貧困者が多数派となる。こんな国を豊かな国と表現することができるというのか。後期高齢者の今の姿はそのまま若者たちの明日の姿である。こんな状況で何が国家だ!

放り出している

 私たちの世代くらいからはもし自分が必要とすれば社会資源をきっちり利用していこうという気になるのかも知れないが、戦前に教育を受けた世代の中には公的機関に「恐れながら」と状況を説明してその庇護を受ける、という意識がまだあるのかも知れないという認識は捨てきれない。それはもちろん人によるのだけれども、どうしても岡山弁でいう所の「ふうが悪い」というニュアンス(岡山・広島方面の人にしか理解できないじゃないか)という感覚、標準語でいうと最も近いのは「みっともない」だろうか。何となくちょっと違うような気がしないではないけれど、近所の手前、そんなことはできないというか、そうした感覚はたしかにあるのだろう。福祉事務所に行くくらいならこのままどうにかなっちゃってもいいや、という気になりやすい。そんな気持ちを押し切り、どうにもならなくなって最後に意を決して出かけてくる来談者はもうそこのところで、後ろ向きになっている。それなのに(良く聞く)申請書すら出してくれないというような扱いを受けたらもうそれだけで尻尾を巻いて逃げ出したくなるだろう。確かにそんな制度を逆手にとって美味しい目を見ようとする輩も存在するだろう。しかし、そこに基準点を置いてはならないのだ。比較に持ってきてはならない「大甘」な例だけれども、大学の図書館が年度末になると貸し出している本を返さない学生がいる可能性があるからと2週間以上の期間を残して貸し出しを禁止するのと似ている。そんなことをする輩がいるかもしれないからとそのマジョリティである本来的に必要とする人たちにまで制限をかけるというやり方である。そうした方針をとれば確かに事故例は減るだろう。しかし、それでは本来的機能を果たす役割まで制限されていくのである。
 【もしもの時のための】備えは一体全体どこまで準備しておけばよいのだろうか。何が起きるのか分からない、あと何年生きられるのだろうか、それまでにはどれだけの費用がかかるのだろうか、という不安は誰にでもいつでもある。若い時はこれから先のことは、そんなこと考えられないほど先のことの様に思える。しかし、真剣に立ち止まって考えたら気が滅入る。だから考えないという解決法もある。わぁ〜っと騒いで考えない日常を作ればよい。そんな不安を解消する一助が社会保障の筈だ。まだアメリカなんていう放りっぱなし制度国家に比べるとまだマシだったはずの日本だったのだけれど、どんどんそうした制度が壊されてきた。現に壊されつつある。その流れは止まってはいない。美しい国にするためにといいつつその流れは止まらない。いや、アメリカの制度になってしまうことが「美しい」と思っているのではないかというくらいである。以前からいっているのだけれども、老後の憂いのない制度が作られたら、人びとは安心して消費をするだろう。すると市場の流通が活発になるのではないだろうか。公共投資を老後施策に廻せばできることなのではないのか。全国数万の土建企業は一体どうなるのか・・。「八代先生、どうしたら良いんですか?」「ビジネスをする以上、需要を求めて自分から動いていくべきだ。昔のままの状態にいて成り立つように支援してくれと要求するのは間違えている(ワーキングプア-IIの八代先生のコメントをそのままコピペしてみた)。」
はてなダイアリーブック欲しい!