ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

上野公園

 外に出るともうお昼をまわっていた。上野公園にはいると何やら音楽が聞こえる。ふと見やるとホームレスの人たちへの炊き出しがいつも行われているところだ。利用しようとする人たちが皆さん整然と並んで座っておられる。こんなに統率されているのを初めて見た様な気がする。で、その音楽は何かと思ったらうら若い女性が7-8人その音楽に合わせて踊っているのである。利用する人たちを座らせてその踊りを見せているのだ。見たかろうと見たくなかろうと見ている。多分一度テレビでも見た隣の国から来たキリスト教系といわれる炊き出しなのだろうけれど、若い女性が踊っている理由がよく分からない。エンターテインメント?
 どうやら上野公園では何人もの大道芸を見せている人たちがいて、登録制か認可制にもでなっているらしい。桜並木をだらだらと下る途中でオカリナを吹いて小さなVOXアンプで増幅して聞かせている女性を見かけたときに、彼女は足下に小さなホワイトボードを置いていて、そこにヘブン・アーチストと書いてあったのだ。その右下には銀杏のマークと東京都と書いてある。そういえば東京都はどこかの公園でストリート・パフォーマーの皆さんを占めだして、こうした登録された人以外はダメだとして途端に盛り下がっている(こんな言葉本当はないな。「真逆」というまか不思議な言葉と同様に。)という話を聞いた覚えがある。確かに規制されるということの弊害ってのはある。そのうち国土交通省もそんなことを始めちゃうんじゃないかと心配。いや、冗談ではなくて。そういう規制の仕方、結構好きだからなぁ、この国は。マジックをやっている結構お歳のいっている割には派手で元気なおじさんもいた。たくさんの人を集めていた若い芸人さんはマジックをやっていたのかも知れないけれど動きがなんだかわざとっぽくて、その上雰囲気が「非日常的」でなかったのでこちらが恥ずかしくなってみていられなかった。
 その桜並木で何人かの人が立ち止まっては携帯電話をかざしているところがあったので、そこまでやってきたらなんと「カンザクラ」の花がほころびて開いているのである。やや!いくら暖かいとはいえ、これはどういうことか。♪梅は咲いたよ、桜ももう咲いた、になっちゃっている。いや、本当に暖かいのだ。なにしろ大噴水に突き出した見晴台とでもいう様なステージでは何人ものストリート・おじさんが靴を脱いで、ごろんと横になっておられたくらいである。そういわれてみると今年の冬は私は股引(パッチといも云うけれど、薄手のタイツの様なもの)を一度しか来ていない。毎日毎日着ていた去年とは大違いである。
 仲御徒町まで降りてきて日比谷線で銀座に向かう。無印良品でかばんと眼鏡をチェックしてできれば木綿のシンプルな袋を見て、と思ってようやく旧千日劇場にたどり着くと、なんとお休み。がっくり。そこから京橋の八重洲ブックセンターへ向かう。途中で明治製菓の横を通ると、オ〜やってる、やってる「100%チョコレート・カフェ」前の路上でこの前と同じように薄〜いチョコレート色の長いダウンコートを着てベレー帽を被ったお姉さんたちが「56」を始め様々なチョコレートの販売をしている。これからが正念場だ。キンコスの大きなウィンドウから中を見たらコピー機がふさがっていたので、そのままブックセンターへ直行。
 いつもの雑誌、新刊、新書を入手。

  • 論座3月号。柄谷行人の「可能なる人文学」が面白そうだ。朝日の雑誌で岩波の、それも文庫にある原典(勿論この場合翻訳だけれども)を読め、といっているぞ。
  • Coyote 15号。国立博物館・平成館二階の売店でもこの本が置いてあった。特集がニュー・ジーランドなのである。若かった頃、南島のミルフォード・トラックあたりに憧れたことがあった。何日もかけて歩くことで始めてみることのできる景色を見てみたいものだと思っていた。あっという間にそんなことのできる体力をどこかにまき散らして来ちゃったらしくてもうすっかり残っていない。この雑誌のこの号は二冊買ってしまっていることに家に帰ってから気付く。印象に残っていなかったというわけだ。終わり近くに「4月号から月刊誌になる」とたかだかと宣言している。う・・・ん、どうしよう。
  • 結構久しぶりに、Mac Fan 3月号。iPhoneをもったジョブスが表紙で手にしたくなかったんだけれど、たまには目を通しても良いかな、と思った。しかし、手にしてみてまた後悔する。欲しくなりそうなものが次から次に目にはいるから。こんなもの見なかったら、知らなかったら欲しくなったりしないんだから。やっぱりどこか人里離れたところに暮らせばいいのかも知れないなぁ・・。この中でも周防正行のインタビューが出てくる。そういえばあの「それでもボクはやってない」の中に豚饅頭のiMacが出てきたりしていたのを覚えている。周防正行草刈民代の夫婦は林檎派なんだそうだ。アメリカの映画を見るとほとんど登場してくるパーソナル・コンピューターは林檎だ。
  • 東京人 3月号。特集がなんと「江戸吉原」である。松葉屋なき後その風俗を知るには落語ぐらいしかない。ま、そういっちゃあなんだが売春街である。きれい事だけでは終わることのできないテーマである。落語には「中」の噺はいくらでもあるし、いつでも聞ける。想像する。しかし、よぉ〜く考えるとせつない噺が多い。山本一力が吉原のあふれかえっていた光りの意味を書いている。「とむらいが 浅草寺と聞き 親父行き」という引っ張っている川柳がよい。「音楽に回帰する団塊の世代」なる文を宮下博という読売の文化部記者が書いている。小特集「熱海たてもの見学」はよろしうかと。
  • ユリイカ2月号。先月末、27日の発売なんだからそんなに遅くなってみたわけではないのが分かってホッとした。特集は「戦後日本のジャズ文化」なんである。これまで私は1960年代のジャズをめぐる日本のシーンからはできるだけ遠ざかっていた。というのは当時の渋谷、あるいは新宿といったところのいわゆるジャズ喫茶をほとんどよく知らないし、酒をほとんど呑めなかったので(今から考えると嘘の様だけれども)酔ってくだまいて、ゴールデン街をいったり来たりや風月堂あたりで真っ黒い格好をしてうろうろしていたなんて経験がこれっぱかりもないのでそんなところに踏み込みたくなかったのである。しかし、この歳になってからいろいろな人がしている話を聞いていたり、持っている経験を聞いたり、戦後いったい何があったのかを聞いてくるとこれはやっぱり掘り起こすべきだろうかと思ったりもする。それにしてもテキストを読んでいるのではほとんど満足なことは起きない。実際あの当時のことをご存知の方のお話をお伺いするのが一番だなぁと思ったのは昨年初めてお話をお伺いした原田忠幸によるところ大ならん。それでもなんでも私はモダンはやっぱりリラックスできないからいやなのだ。スウィングしてくれないとね。
  • 高次脳機能障害」橋本圭司 PHP新書 2007.01.15 新書になって出版されるところまで来たということか。
  • 『昭和史の大河を往く「靖国」という悩み』 保阪正康 毎日新聞社 2007.01.31 これまで保阪正康毎日新聞社から発刊したことはないと思ったがこれまたサンデー毎日での連載ものが原典だという。「近代日本のいくつかの戦争で戦死した方々へ捧ぐ」とされている。装幀も頁のつくられ方もこれまでの保阪本から大きく異なっている。