ほぼ足りてまだ欲 その先

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「アメリカ在住日系人強制収容の悲劇」

アメリカ在住日系人強制収容の悲劇 (世界人権問題叢書)

アメリカ在住日系人強制収容の悲劇 (世界人権問題叢書)

 明石書店 1997 大谷康夫著になるこの本はタイトルから見るとこれまでに何冊も出版されているであろう、いわゆる第二次世界大戦中に行われた米国西海岸地域での日本人・日系人強制収容(米国ではrelocation=転住とされていた)についての著作のひとつと理解されやすい。私もそうした一冊だと思っていた。この分野については私は20-30年ほど前から何冊かを読んでいたのでほぼ理解しているつもりであったけれど、出版社が明石書店であること、そして私が日本を留守にしていた時期に出版されていること、つまり店頭でも見たことがなかったので、地元の図書館の蔵書中に発見してすぐに借り出してみた。すると、著者は中国人労働者から始まった米国での黄禍差別に晒された日本人労働者、移民の苦しみから始め、日米開戦に伴う米国の対日本人の扱いを行政、司法、立法の面から分析していて、国家反逆罪に問われた二人の日系人についてその疑惑のきっかけ、その法解釈、その後の扱われ方について触れた、私が知る限りでの4人目の著者といって良い。しかし、この著者がこうした米国における日系人への戦中の扱い、そしてそれへの解決の方法を提示することによって浮き彫りにしたいと願っていることは、他ならぬ私たち日本人がこれまであの大戦以降に扉を閉ざし続けてきた当時日本人として扱われていた、現外国人の人たちのことであることを知った。タイトルからだけではその趣旨は窺い知ることができなかった。
少年犯罪の深層―家裁調査官の視点から (ちくま新書)

少年犯罪の深層―家裁調査官の視点から (ちくま新書)

 同じような意味で、まだ読みかけ中だけれども「少年犯罪の深層ー家裁調査官の視点から」(藤川洋子著 2005 ちくま新書)もタイトルからだけでは窺い知ることのできなかった内容に踏み込んでいて興味深い。少年犯罪と自閉症スペクトラム障害との関係を語ろうとしている著書は他にもあるのだろうか。私はこの分野にこれまでほとんど踏み込むことをせずに来た。しかし、これは看過できない問題だ。親の教育方針の問題であるとして観察してきた事象はそうした障害を検討する必要があるかも知れないということと、親の側にそうした障害を疑う必要があるかも知れないという二つの意味での観点を持つ必要があるということに気がつかされる。