ほぼ足りてまだ欲 その先

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石炭の話

 今朝の朝日新聞の一面トップ記事は豪州の石炭。ニュー・サウス・ウェールズ州のニューカッスル港沖に積み荷待ちの船舶が70隻いて、約一ヶ月のウェイティング・リストとなっているという話だ。10年前には普通で20隻、多い時には30-40隻だっただろうか。豪州の石炭積出港はクイーンズランド州からニュー・サウス・ウェールズ州のPort Kemblaまでいくつもある。中でもこのニューカッスルはその内陸部にハンター・ヴァレーというワインでも有名な炭鉱地帯を抱えている。日本の企業も総合商社から鉄鋼企業、エネルギー業界がこぞって資本参入していて各社が現地のみならず、シドニー地域、ブリスベン地域に現地法人を抱えて石炭の生産、対日輸出に励んでいる。Google EarthでNewcastle, NSWを捜すと、中心地の東にHunter Riverという河の河口域がある。その港のすぐ北に黒い列が4列並んでいるところが見つかる。これが内陸から積み出されてくる石炭を積み上げているピットで、船はこの先の岸壁に着いて指定の銘柄をコンベアで積み込む。新聞記事には「その輸出用石炭の年間生産能力は1億トン以上。だが、鉄道などの不備で、運搬能力が9000万トンしかない」と書かれている。それでは鉄道を強化すればよい。しかし、問題はそんなに簡単ではない。
 今の予測であれば、この石炭需要はそう簡単にへたるわけではない。だから例えば輸送用の鉄道を強化すればいいじゃないか、という発想ができる。しかし、その設備投資に誰がどこから金を引き出すのか、そしてその建設にどれほどの期間がかかるのか、を総合的に考える必要があってすぐに解決できない。それでなくても都市部(ニューカッスルはそれほど大きな都市とはいえないけれど)は既に住宅に取り囲まれている。それなら全く違うところに積出港を新設することが出来るだろうか。それこそ10年ほど前にこれほどの中国需要が大幅に伸びると断定することは非常に難しかった。確かに当時、台湾資本が鉄鉱石開発に思い切った投資を検討しているというニュースが飛び交った頃からそろそろそうなるのではないかという読みはあった。しかし、よもやこんなことになるとは。
 Google Earthクイーンズランド州のGladstoneという街を見てみよう。ここはNewcastleに比べると内陸の石炭産出地域が実際に開発されたのが新しい。積み出し施設の石炭のストックヤードも大きく、8列になっていて、港の設備もそれぞれまだ10年ちょっとしか経っていない。積み込み用のジェティは沖に突き出している。しかし、こちらに運ばれてくる石炭は掘削が簡単な露天堀だけではない。
 つまり、世界一の石炭埋蔵量を誇る豪州でも、その開発が比較的容易といわれる露天堀で産出できる地域はもうそれほど残っているわけではない。ロング・ウォールといわれる大規模な構内堀が普通で、その先はもっと複雑な掘削の必要がある産出方法を開発しなくてはならなくなるだろう。それでもかつてに比べれば驚くほどに急騰した石炭の輸出販売価格がこうしたあたらな開発に投資される方向に使われると良いが、この事業で儲けた資本家がその先どこに行くのか、というのは読めない。日本の各企業が頑張っても地元資本がどこまで頑張るのか。ひょっとして気がついたら中国やインドの資本と間接的にせよ組んでいる、なんてことにならないとはいえない。
 石炭には個性があってカロリーがどれほどあるか、硫黄分の含有量がどれほどか、水分はどんなもんか、といったところでその品位には用途に向き不向きがあって、石炭なら何でも同じように使えるわけではないという、結構微妙な商品である。
 というのが素人の聞き書きだけれど、どなたか根本的な解決方法が今現地でどの様に語られているのかを教えてくれる人がいると良いのだけれど。それにしても月曜日の全国紙の一面トップ記事がこれってどんなもんだろうなぁ。