ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

NHKラジオ深夜便

 午前1時の話は全日本視覚障害者協議会相談役:藤野高明だった。藤野は少年時代に不発弾で視覚を失う。1971年大阪で教員採用試験を点字で受験して合格。1973年9月から大阪市立盲高等部社会科教員。数年前に定年退職。彼の話の中で記憶に残ったのが、大江健三郎が「若者に取り返しのつかないことは何もない。但し次のふたつを除いて。それは人を傷つけたり殺めたりすること、そして自らを殺めること」といったことだという。若いころには自分が抱えた視覚障がいという事態をなかなか受容できなかったことがあってか、ストンとは落ちてこない言葉だったのだけれども、盲学校を退職近くになって、ようやくその本当の意味がわかったようだというのだ。仰る通りで、若い時にはなかなか目の前のことに翻弄されてそれが見えない。それでも、歳がいってからでも、それがわかればそれほど幸せなことはない。それを知らずに人生を終えて欲しくないと心から思う。
 藤野の話の中にも出てきたが、戦後のNHKラジオの第2放送は子ども向けの放送があって、眼の見えない子どもの思いでのひとつになっていたようだ。この話は東大の福島先生からも聞いたことがある。ツベルクリンが陽転して一学期を家の中で過ごすしかなかった私にとっても唯一の楽しみだったし、それが外への窓口だった。