ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

Salamanca Market

 今日は土曜日。どうせタスマニアホバートに来るならば土曜日を一日自由にしておかなくてはならない。それは朝8時からサラマンカ・ストリートでサラマンカ・マーケットが開かれるからである。それはSydneyのThe Rocksが週末になるとRocks Marketになるのと似ているけれど、あっちのようにおみやげに焦点が当たっているわけではないところが根本的に異なる。今日は天気予報が最高気温16℃でshowerだけれども朝は風は冷たいものの、強い陽射しがあたる。
 ちょっと離れた空き地にできる土曜日限りの3ドルの駐車場に車を入れて降りていくとすぐが八百屋さんで、大根に「daikon」と書いて売っている。これまでにホバートに来ると必ずこのサラマンカ・マーケットを覗いているのだけれど、八百屋といえば必ずそうだったアジア人の顔が余り目立たなくなり、ここも白人だ。通りから外れたかつての州議事堂に行く方に何軒かの八百屋が固まって出ていてそこがアジア人がやっている。
 帽子に大変惹かれる。しかし、持って帰ることを考えると手が引っ込む。本屋にも惹かれる。しかし、帰りの荷物が重くなることを考えると萎える。前回入手した書籍の類をSydneyの郵便局(ここはとっくに民営化されている)から送ろうとして中国人のとても若い女性に屈辱的な対応をされてから、それがトラウマになっている。まだ、Sydneyで増える可能性がある。
 実は昨日すでにHobart市内のDymocksで「The Bone Man of KOKODA」という本を入手している。パプア・ニューギニアに兵として派遣されたKokichi Nishimuraの話としてある。(追記:090511:こちらに著者のインタビューがある。どうやら2009年には日本語訳が出るようだ。)

ココダの約束 遺骨収容に生涯をかけた男

ココダの約束 遺骨収容に生涯をかけた男

 どうやら自然派の石鹸の類はブームのようだし、なにしろ名物のHuon Pineの加工品は随分昔からここでは幅をきかせている。あとは新品、中古の服飾品、アクセサリーである。かつてはソーセージの店が大賑わいだったのだけれど、すぐ傍にラム・ステーキの店ができたり、パン・ケーキの店ができたりしていて列は短くなったようだ。
 ここのもうひとつの名物は音楽のパフォーマンスで、5年前に来たときにもアンプを使って大規模に演奏していたのは東京でもあちこちに出没する南米音楽のバンドだ。そして今年はじめてみたのは女性のアンサンブル「Ethereal」で今日ここで演奏していたのは女性三人だけれど、CDには五人の女性が写っている。ケルティック系の音を作り出しているユニットである。子どもはというと、なぜか12弦のギターをむやみにかき鳴らしている少年。50年代のオールディーズをやけになったように歌っている青年二人。そしてチェロをぎこぎこと宮沢賢治の如く弾いている少年は突然、「荒城の月」を弾きはじめた。後ろに回って楽譜をのぞき込むとなんと「Kojo No Tsuki」としてあるのだった。

Cary Lewincamp

 そして極めつけはあのソロギタリスト「Cary Lewincamp」である。私が彼を初めて聴いたのは2003年のことだ。やはりこのSalamanca Marketで人と会うために急いでいるところで彼のギターを聴いて足が止まり、戻ってすぐに彼が持っていた2枚のCDを買った。日本に来たのは何年前になろうか。これまでに彼は日本に2-3回来ているはずである。2回目だというときに、やはりホバート近郊に住んでおられる女性からご案内を戴いて大井町駅前にある品川区の施設の小ホールでの彼の演奏会にワクワクしながら出掛けたものだ。その時に客席にやってきたのがかつてのThe Spidersの井上たか之だった。二人は演奏後話し合ったはずだ。そして立川のホテルでも小さなコンサートが開かれると聞いてこれまでお会いしたこともない方に切符をお世話いただいて聴きにいった。
 まさか彼が今でもSalamanca Marketで弾いているとは思わなかったけれど、4枚目の琴のEtsuko Sakaiとの共演によるCDはこうしてSalamanca Marketで彼の手から直接買うことができた。ここでもまた彼と一緒に写真を撮っていただき、何曲か彼の曲を聴いた。その後他の店を冷やかして帰ってくると彼はまだそのまま弾いていた。私が帰ってきたのを見て、彼は「For you !」といって弾きだしたのは「ふるさと」だった。そういえば彼は日本に来たときに弾いたし、4枚目のCDにもこれを入れていた。私は昔からこの曲にはからっきし弱くて、最初のメロディーを彼が弾いたときに思わず落涙しそうだった。次に日本に来る予定はないのかと聞くと、プロモートしてくれる人がいればね、という答えだった。彼のギターは日本でブレイクしてもおかしくない。あの岡崎倫典と同様、私は彼の音楽的センスにぞっこんである。