ほぼ足りてまだ欲 その先

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映画「浅草堂酔夢譚」

 とうとう本番の日が来た。もう、いやという程稽古に稽古を重ねてきたのだから、怖いものなんてもうないようなものだけれど、少しずつ変更点も微妙に出てきていたし、本番にしか実現できない部分なんてものもあって、どうなることやらと気をもんだ。
 集合時間の朝8時に行って荷物をほどいてみると若い人たちがもうすでに力仕事に取りかかっている。芝居の世界の若者たちは自分からどんどん動いていくから素晴らしい。自分がやりたいことがなんなのか分かっている、あるいは分かろうとしている若者たちは凄い力を持っている。
 楽屋口に出てみると主演男優の方が通りかかる。どうしたのかと思ったら、ちょっと時間がありそうだから歩いてみたといっておられる。不案内の街でも朝の散歩は気持ちが良いという。と、そこへ旧知の知人が娘と一緒に車で通りかかる。「なにやってんの?」といわれても、この企画はそう簡単に説明ができないところが苦しい。
 なんだかんだあっていよいよ本番に突入したのは15時半頃。30分経つか経たないところまで来て、袖で次の出番に備えているところに「カット!」の声。えっ!止まっちまったかぁ。もう一度頭からやり直すことに。早いうちのカットで良かった。これが深くいってからの出来事だったらそりゃ大変だ。二度目はやや危ないところもあったけれど、それを日頃の訓練の賜物というか、止まらずに演じきったメンバーは賞賛に値する。
 無事に最後まで来た時、みんなの達成感は並大抵のことではなかった。何ヶ月も、ある時はぶつかり合い、ある時は悔しがり、様々に論評する人たちからの孤立感に襲われ、ある時は疑い、ここまでやってきた人たちだからその達成感は自分たちだけのものではないけれど、それはそれは大きい。男だろうと女だろうと感動を受けた時はそれをぶつけて良い。
 打ち上げで若者たちが私によってきてくれるのはそれはそれは嬉しかった。
 打ち上げは合同二次会からどういうきっかけで解散したのか良く覚えていないけれど、三次会が中華屋で餃子を食いながらビールを呑んで、相当やっかいな話に切り返しながら解散になり、家の方向に歩くと正面からYがやってきて再び遭遇。これじゃ解放されないと、まだ残っている連中がいる店に行くことにするけれど、そのためにはコンビニに寄って軍資金入手。合同したものの、みんながオール覚悟と知り、あわててなにがしかを託して退散。