ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

NHKスペシャル

 「シリーズ原発危機 安全神話〜当事者が語る事故の深層〜」が放送された。これまでにない一歩踏み込んだ番組だと私は思った。通産官僚、科技庁官僚、原子力委員会委員、東電元副社長等々、それぞれの責任者であった人たちを含めて150名のインタビューを重ねてきたと説明されていた。彼らの言い分を聞いていると、「安全神話」に「振り回されてきた」というけれど、それは自分達が創り出した幻想以外の何物でもない。
 シビアアクシデント対策として国が電力会社を規制する指針を出すことができるのかというと、それを課したらそれまで「絶対安全」だとしてきたものが、ひょっとしたら危ないかも知れなくて、そんな事態になっちゃった時のために、という想定を仮にもたてるのは「絶対安全」を覆すことになるから、電力会社が自主的に対策をとりなさいということにしたというのだ。
 登場した人物の中に私が不遜な人間だと思ったのは何人かいたのだけれど、東電の元副社長、現在は(何をやっているのかよくわからないけれど)一般財団法人 原子力国際協力センターの理事長職にある服部拓也は殆ど責任なんて感じちゃいない。「安全神話」を抱えていた「皆さん」と発言したのだけれど、思わず「それは誰だよ!」と画面に向かって投げつけた。
 で、東電の某男が反応するのは、そんないつ起こるかわからないことに3ケタ億円の費用をかける必要があるのか、利益を上げること以上に安全対策をすることに車内のコンセンサスを得ることができるのかどうかといったら難しいということだったという。彼はこの発言は社会的には理解されるだろうと確信を持っている様子だ。
 この時点でもうすでに明らかなように、原子力発電という未完の技術で廃棄物が地球上を汚染する技術を稼働させている体制は「自社の利益を優先してその未完技術が引き起こす被害には目をつぶる」ということであったのだ。これはもちろんわかっていたことであるけれど、関係者が直接認めた発言として憶えておきたい。まぁ、多分東電の記者会見でこの発言を認めるかと質問したら、あの松本は「見ておりませんので、確認を致します」というだろう。そしてそのあと「もう既に弊社に関係のない方の発言ですので、弊社としてのコメントは差し控えさせて戴きます」というに違いない。
 どうして東電は東京地検が追いかけないのだろうかという疑問は大きい。こういう疑問を持ってみている人たちは同時にこうも勘ぐっている。当然東電は手を打っているから地検は動く気がないのだろうと。
 この番組では例の「明治三陸地震」が福島沖で起きたらというシミュレーションの結果、津波が10.2mの高さになり、既存の福島原発防波堤の10.0mを超える結果が出ていたことも触れるがそれに対する反応がやはり「考えないことにした」と覚しきことであったことを告げる。
 そして、最後にディレクターが「私達マスコミの責任もあった」と表明した。つまり、NHKはこの番組の最後で、原発問題について、日本のマスコミは正しくこれを報じてこなかったとついに認めたのである。
 さて、それでは民放各局はこのNHKの姿勢をどう評価するのか、あるいは全く無視をするのか。多分橋下徹でわぁわぁやって、この番組を無視することだろう。
 また、こうなった以上、NHKは国内の反原発運動について真摯に報道していかなくてはならないだろう。