ほぼ足りてまだ欲 その先

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札幌餓死事件

 昨日の「NNNドキュメント'12」は「心なき福祉 札幌・姉妹孤立死を追う」というタイトルで札幌テレビの制作。記憶に新しい札幌市白石区での40代姉妹の孤立死事件についての報道だった。福祉課に残されている3回の面談記録を元に役所の言い分を取り上げている。この姉妹の妹さんは知的障害があった。両親を早くになくした姉妹は姉が働き、妹の障害年金を加えてやってきたのだけれど、妹が体調を崩し、その介護が必要となり、挙げ句に姉が体調を崩し、生活困窮に陥ってきた。
 まさに国のセイフティー・ネットが機能する対象そのものであり、彼らの生活を役所が保護してくれることに文句がある人がいるわけがないと思われる環境だといえる。
 しかし、都合三回相談に訪れた役所は姉にとうとう一度も生活保護申請書を渡さなかった。なぜか。システムを説明して最後に「どうします」と聞いたら「考えてきます」という返事だったからだという。インタビューで「しかし、彼らの困窮土は生活保護に十分値するケースだったのではないのですか?」という質問に対して「そうだったけれど、ご自身が申請をするという意思表示をしていただかなくては申請書を渡すことができない」というのである。
 永年福祉担当セクションで働いてきた元職員が顔を伏せ、声を変えての証言ではできるだけ申請書を渡さないという指導がされてきたことは事実だという。
 この点はもう何年も何年も指摘されてきた事実で、確か本省からは担当課長指導のような非常に曖昧な通達で実施されてきたことだ。この分野を調査研究してきた人たちの中では指摘され続けてきたことだが、全国的な生活保護受給者の増加の要因の中にはこの方針が指摘を受けて撤回されてきたからだという要素がかなりの部分を占めるのではないかと思っていたので、至極ショックだった。未だにこんな事が続けられていたのだ。しかも、役所は多分未だに役所側から申請を促す行為を採ったらどんどん申請者が増えてしまうのだという本来の生活保護の考えから大きく逸脱する防御思想が働いているのだということになる。
 不正受給の追求が正当化される風潮の中で、本来的に生活保護で守られるべき人々が守られていないという事実を報じるという行為はマスコミが負わなければならない責任の一つでもある。