かつて空港で見かけるスーツケースといえば日本人はACEがライセンス生産していたサムソナイトと判子で押したように決まっていた。しかもその上からベルトを巻いてある。それはもうまるで政府が旅行を許可する代わりにこれを装備しなくてはならない、かの如くそうだった。多分あの当時鞄のACEは相当儲かったんだろう。かくいう私もベルトは常に巻いていた。
今や誰も彼もが車輪の着いたスーツケースをゴロゴロところがして歩く。それもみんなジッパーで閉じるタイプのハードシェルのものだ。
そしてちょっと金持ちぶりたい連中が転がしているのがこのドイツ製のコルゲートアルミの鞄というか、ケースだろう。この冷たく光る、まるでかつてだったらカメラクルーが機材を入れていたかの如きケースが流行るのかといったら、これはもう高いからだ。coachはビトンといったバッグが流行るのもどう考えても高いからであって、「それを手にしている私が好き」だという感性がなせる技なんである。
で、こういうバッグやケースをレンタルするところがある。しかもだれが見てもそれがレンタル品だとは瞬時にはわからない。そうまでしてそういうことをしたいという気持ちがもう既にきちゃっている。
かくいう私もドイツ現地では安く買えるところがあるという情報なんかをきちっとチェックしていたりするので煩悩の固まりなんである。しかし、あの冷たい印象はやっぱり嫌だとひがみ根性でいってみる。