ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

NHKスペシャル

 NHKは戦後70年特集を毎晩放送している。いったい何時までやるのだろう。2日に放送され、5日の夜中に再放送された「密室の戦争〜発掘・日本人捕虜の肉声〜」を録画できず、一体どんな内容なのか、「トレイシー」で書かれていた米国の施設のことなのか、と気を揉んでいた。とうとうしょうがないから200円だか300円だかを払って、あの胸くそ悪いNHKのオンデマンドで見る羽目になった。視聴料の二重取りである。ふざけるな。

トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所 (講談社文庫)

トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所 (講談社文庫)

 中身はあっと驚くものだった。マッカーサーがレイテから日本軍に追いやられ、豪州のブリスベンに駐在していたことはそれほど日本では語られないから知られていないようだが、彼らは日本軍に攻め込まれたら、ここから先は進駐されてもしょうがないというラインの想定までしていた。
 そのブリスベンの郊外に旧日本兵の戦時捕虜の尋問施設があったというのだ。連合国翻訳通訳部(Allied Translator and Interpreter Section, ATIS)という組織だったようだ。しかも、どこから掘り出したのか知らないが、彼らの尋問を13時間分も記録した録音盤(つまりレコードだ)が現存しているという。
 一体何人分の尋問の音声があるのか説明していないが、四人の日本人捕虜が出てくる。

  • 海軍主計大尉:稲垣利一:非常に綺麗な英語を喋る。尋問官も非常に流暢な日本語を喋る。しかし、微妙なところでは日本語にする。海軍経理学校では中曽根康弘と同時に学んでいたようだ。ニューギニアのブナに上陸してポート・モレスビーへ侵攻するというあの悪名高き作戦に加わっていた。この戦争を早く終わらせるために連合軍に協力しろと要請される。彼は迷いに迷い、一度は断るが、とうとう最後に1943年10月に協力することを承知する。彼はその後George InagakiとしてFELO( Far Eastern Liaison Office)極東連絡局に協力し、日本軍将兵へ投降を促す伝単作りに従事した。1945.11に日本へ帰国。海外の出版物の翻訳に従事し、11年前に87歳で死去。音声を聞かされた甥と姪が「どこか深いところに悲しみ、苦しみがあったようには感じていた」という。
  • 湯目國夫:1944.08.16 特務機関「神機関」で働いてきた。
  • 尾方駒三郎(20) 1944.10 ルソンで全滅した第7連隊で戦車を操縦した。戦争犯罪に関する証拠集めを始めていた連合軍が憲兵によって連れてこられたゲリラを「殺してくれ」と命令されたと応える。尾方の供述書が発見された。尾方は帰国後68歳で死去していた。
  • 横田しげき 三等水兵 ニューギニア島グッドイナフ島での豪州人7人を銃殺した容疑がかけられた。「明日全部を話す」といった夜、26歳で自殺。カウラの日本人捕虜墓地に葬られている。

 日本軍捕虜の尋問についての話を読むと、「トレイシー」でもそうだけれど、日本軍の将兵は「死して虜囚の辱めを受けず」とはいわれてはいるものの、万が一捉まったときにどうしろと教えられていないから、少しでも良い扱いを受けると、義理に感じて良く喋ったといわれる。
 精神論ばかり振り回すのは戦争中もそうだが、戦後70年の今でも全く変わっていない。