ほぼ足りてまだ欲 その先

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後ろむきの人生

 この歳になると、時々昔のことを想い出す。
 私はバブル真っ盛りの頃、ひょんなことでそれまで同じ会社でやってきた仕事の中でも随分替わった商品に携わることになった。当時構造的不況といわれた分野にいた人間が大量に仕事を外されて、それまでになかった分野を開発しろといわれ、あぁでもない、こうでもないと、まるで明治革命になってからの武士の商法のようにそれまで手を付けたことのないものを商品にしようとすることになった。
 で、たまたま同僚がアメリカから仕込んできた商品があって、それを売れといわれ、何しろ実績ゼロの商品だからプロモーションをかけてようやく初受注した。最初からしっかり儲かるシステムで売るという方法はあるけれど、ほぼ同時にその商品を扱いだした他社がすでに初受注していたから、焦ってとにかく実績を作るという方針にして突っ走った。
 それが様々な局面があって完成してみると、結局赤字に終わってしまった。技術屋でもない私が外注業者を探し、交渉し、渡り合って何度も徹夜をして完成した結果がこれだった。しかし、次に繋げることができるとプロモーションしていた最中に突然外されて、まったく関係のない子会社に飛ばされた。赤字を出したから、というのがほぼ伝わってくる理由だった。
 その後、何年も経って、当時の部長だった人が開いた絵の個展に行ってみると、その人がとても驚いて私の顔を見た。「なんだ、来てくれたのか」と大変に意外そうだった。なんでそんなに意外な顔をしたのか、今の今まで理解できなかった。普通だったら懐かしそうに対応してくれるんじゃないかと思っていたからだ。
 他に理由があったからだった。自分の子飼いを入れるために私を外したからだ。彼は私が恨んでいるだろうと思っていたから意外だったのだ。
 はっきりものを言ってばかりいたら人は疎ましい。独立して活動するのは孤立となるのが日本の組織なのだ。それを無視していたのでは意味をなさないらしい。今やほとんどの同僚は退職した。それでもかれらは今でもつながっているし、ヨイショ大会が続いているのが面白い。