ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

ハワイ

 2020年2月に彩流社から上梓されたもので、これまで全く知らなかったハワイにおける日系アメリカ人の戦中抑留について書かれた論文というべきものと思われる。いわれてみて初めて気がついたのだけれど、米国に戦中設定された10指にあまる、いわゆる戦時転住所、有り体に言えば、日本人・日系米国人戦時強制収容所についてはあまた資料が出ていて、その中身については多く調査資料が刊行されているのだけれど、当時日本人、日系米国人が全人口の4割を占めていたといわれている当時のハワイ準州でどのような扱いを受けていたのか、についてはほとんど知識を持たなかった。
 しかも、約二千人の日系人を収容したと言われる収容所は、ついこの前まで、その場所すら特定されていなかったらしいことを知って、大変に驚いた。それで、どのような資料があり得るのかということを教えて戴いた中に、この資料があった。ハワイに関する研究者の人たちの間では、常識になっているらしい、収容に関する有形無形の歴史資料は本土に比べて明らかになっていなかったようだ。

 すぐさま入手せんとしたけれど、価格が4,500円というのに驚いてしまって、区立図書館にリクエストを出した。すると二週間くらいで、準備ができたというメールが来た。意外な早さにビックリして図書館へ行く。
 いつもの予約のブースへ行くが、その予約書籍が出てこない。カウンターにいって、予約した書籍が予約ブースにないことを告げると、奥からビニール袋に入った本をもってきた。驚いたのはここから。
 業務受託会社の係員は「これまでこうして借りたことがあるか?」と聞く。よその図書館から廻ってきた経験は2回ほどあるが、もう10数年前のことだ。「ある」と答えると、「では、ご説明は要りませんね」という。この人何年以内に経験があるかとは聞いていない。ビニール袋から本の上に乗っている伝票のようなものを取りだし、そこに署名しろという。なんの署名かと聞くと、この本の状態を確認する書類だという。私はその場で初めてその本を見た訳で、まだ触ってもいない。そしてそこには123ページに「折れ」と書いてある。「いや初めて見たのに、そんなのわかるわけないでしょ」といっているのに、彼女は、「返却もこのビニール袋に入れた状態でもってきて下さい」という。邪魔くさい袋は願い下げだが、そのまま渡す。つまり、彼女が言っているのは、隣の区の図書館から借り受けて利用者に貸し出すが、万が一この本に問題が起きたとしても、それはこの区の図書館の責任ではなく、利用者が直接責任を負う、ということを明確にしておきたいらしい。ビニール袋に入れたまま取り扱えとでもいいそうなくらいのシステムだ。馬鹿馬鹿しくて、相手にしている気にもならない。こんなことをいうなら、通常の借り出しについても同じようなことをやったらどうか。シリーズものの欠損をどうして補填しないのか。矛盾だらけで、なんともはやである。これもまともに議論したら、すぐさま切れる高齢者扱いされちゃうんだろうしなぁ。

後日談 20210119

 当然借り出した隣の区の図書館から廻ってきた本は、二週間で返さなくてはならない。くだんのビニール袋に入れて、「返却です!」といって持っていった。どんなことが起きるんだろうかと思ってみていると、かかりの受託会社係員の女性は、なんと336頁のこの本を最初から一頁ごとに点検しながら最後までチェックするのである。123頁に「折れ」と書いてあるのだけれど、それらしいものは見つかりませんよ、とお伝えすると、もうひとりの係員と一緒になって、その123頁をためつすがめつし、とうとう最後に「これですね!」と頁のヘリに幅1mmにも満たない、長さ7mm程の引っかかった跡を指さす。恐るべき点検魔というほかない。
 これをやらせている図書館のポリシーというのは一体何だろう。隣の区から借りてきた本だからこんなにためつすがめつするのであれば、地元の図書館にある図書についてはどうして(彼等のやり方からいうと)ないがしろにしているのだろうか、と納得ができない。なにがイヤかというと、他の利用者を待たせたまま、一頁ごとにチェックされながら待たされ、「お前は汚したりしたんじゃないかと疑わしい、やりそうな顔をしているよ」とでもいわんばかりに点検されているというのがプライドを思いっきり傷つける。とうとう「もう二度と借りないや」と口にしてしまう。だからお爺さんは嫌がられる。彼等も図書館のこの方針には辟易しているんじゃないだろうか。この本はもう一度隣の区の図書館から借りだして、ゆっくり読むことにする。