ほぼ足りてまだ欲 その先

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自国民

 戦争中に西海岸に暮らしていた多くの日系アメリカ人を強制的に内陸部の僻地に隔離した政策は明らかに人権蹂躙(今時使われないなぁ)で、米国政府は後に大きな付けを支払う結果となった。彼らは誠に理不尽な扱いを受けたのだ。それまでのうねりのような黄禍論、日本人を名指ししての差別法の制定をあの国は平気でやってきたから一般民衆も全くなんの躊躇もなく日本人、日系アメリカ人を排除した。
 彼らが制限された荷物を持って汽車に乗せられて連れて行かれた写真を見ると、それがそのままナチスドイツがユダヤ人を強制連行して虐殺した写真と重なる。
 ドイツもアメリカもそれぞれ補償をした。補償をしたからあの歴史を消すことができるのかといったらそんなことはない。やったことはやったこととして潔く、その決着をつけなくてはならない。それが人としての道である。
 マンザナーの元日本人収容キャンプの跡地は日系アメリカ人の市民社会が保存している。そしてLos AngelesのいわゆるLittle Tokyoにある全米日系人博物館にはその資料がすべて残されており、隣にあるGo For Broke記念碑は当時の日系アメリカ人兵士で犠牲になった人たちの名前を残してある。
 ドイツはナチスが設営した強制収容所連邦政府がそのまま保存していて、いくつもそれを公開していつまでも忘れないようにしている。
 では、私たちは何を保存しているだろうか。知覧の特攻記念館や靖国神社遊就館では日本軍およびその将兵について記録しているけれど、日本軍が行った非人道的な行為を戒める記録の保存に努めているだろうか。私たちの国が行ったことによって被害を受けた側がその被害を忘れまいとして残す記録を私たちは尊重しているだろうか。
 豪州カウラの地では当時捕虜として収容されていたひとたちが暴動を起こして射殺されたのち、現地の人たち、つまり敵の民間人は彼らを墓に埋葬し、今に至るまで70年間、毎年その墓を供養してきたという。