ほぼ足りてまだ欲 その先

「ほぼ足りてまだ欲」がはてなダイヤリーの廃止にともないこちらに移りました。

ヤッホー

 近所に職場がある先輩からお伺いして、小海町の松原湖の奥、リエックスというスキー場の近くに八ヶ岳が丸見えの露天風呂があるということなので、出かける。佐久甲州街道松原湖方面に曲がり、山へ向かってがんがんあがっていく。目標はリエックスへの看板。そして時々出てくる「八峰の湯(ヤッホーの湯)」という看板。先輩はたしか「はっぽうのゆ」といっていたっけ。リエックスに至る前に到着する。どうやら温泉の建て屋の他に低いコンクリートの打ちっ放しのずいぶん洒落た建物がある。竹竿の先に銅板で折った笹舟(どうも表現がおかしいかな・・・)がぶらさがって、ゆうらゆうらしている。後でわかったのだけれど、約10年ほど前に作られたという高原美術館なんだそうだ。あいにくと今は準備中だそうで開かれていないが、この建物の設計は安藤忠雄だそうだ。
 風呂の建物はいかにもこの界隈にある公共機関が地元民のために建てた風呂らしい建物だ。どうやら真新しい建物らしい。入り口においてある公衆電話に背中が丸まって見えるおばあさんがそれはもう大きな声を張り上げて誰かに何かを訴えている。それがとても違和感があったのだけれども、あとからこのおばあさんの存在感はもっともっと大きくなる。
 靴を鍵のついた下駄箱に入れるとその鍵をフロントで退場時に精算するためのバーコードがプリントされたキーと交換。このやり方は一頃レジャー施設で流行ったやり方で、これなら現金の置き場所に悩まなくても施設内での一人あたりの消費額が伸びるというのがそもそもの考え方だった。そうだ、やってみようと思う施設にその場で衝動的に利用することができるからだ。しかし、こうした風呂施設ではせいぜい食べ物程度のことなので過剰なやり方ではないかと、他の風呂施設でこれを採用しているところを見てそう思った記憶がある。案の定ここの施設でも中に置いてある自動販売機の中には「バーコードで利用ができません」と書かれている機械がある。私はどこかのゴルフ場で隠しカメラで暗証番号が読み取られてしまって中身を抜かれた事件があった貴重品デポに貴重品をしまい込んだけれど、後で気がついてみると利用しているのは私だけで、使用中のランプが一つだけぽつんとついていた。つまり皆さん現金を持ち歩いているわけで、これだったら何もこんなシステムはいらないわけだ。大体こうした施設は任せたコンサルタントに「これまでの経験からいうとですね・・」と振り回されてしまう。
 建物内部の作り方は見た目の割には材質はできるだけ無駄を省いているのが見て取れる。その代わりできたばかりの時期はいいけれど、メンテナンスにきちんと予算取りをしていないとすぐに惨めな状況となってしまうところを気をつけた方がよい。建物の中にはそれほど広くはないけれど、何の気遣いもなくごろごろ寝ていられるスペースもあり、それの3倍はありそうな食事場所はひとテーブルごとに衝立で区切られていて落ち着くだろうけれど、開放感はない。
 この施設は今年の7月にオープンしたばかりだそうで、なんとまだたったの2ヶ月である。まだ始まったばかりだからだろうか、店員さんも新鮮でなかなか気持ちがよい。この雰囲気をいつまでも保っていられたらいいなぁ。往々にしてどこかのこうした風呂施設の売店のパートのおばさんたちのように、なんだか客の品定めをしそうな目線を投げるようになっちゃうから。
 ここの風呂の売りはなんといっても露天風呂から見える八ヶ岳連山である。今日も風はあるもののというか、だからというか、丸見えである。右から稲子岳の左肩、天狗、硫黄岳、横岳と見えてほんの微かに赤岳の山頂がのぞいている。しかし、風呂から竹の塀までの距離があまりないので、風呂に首までつかるとあんまりよく見えない。これが残念だ。掛け流しの風呂は建物の中の湯船だけのようだけれど、露天風呂は気持ちがいい。
 満喫してあがってくるとテレビの前の椅子に腰を下ろしてMLBを見る。昼飯をどうしようか、中込の「つたや」の蕎麦にしようか、それとも八千穂駅前の奥村土牛記念館に行くためにどこか他で食べようか。そんなことを考えながらテレビを見やっているとどうも横の方が騒がしい。見るとさっき入り口の電話にとりついて大きな声で電話の向こうに怒鳴っていたおばあさんがなにやら従業員を呼び止めては語っている。どうやら毎日ここに来ておられるようだ。しかし、風呂に入った様子もない。そして連れがいるというわけでもなさそうだ。そこにおじいさんがやってきた。「お〜、またきてんのか」といわれて返す言葉は「あんたもまた来てんのかい」である。そうか、ここにはこうした地元のお年寄りにとっての一種のデイサービスになっているわけだろうか。そういう観点で見るとこの施設にはゴロゴロしながらお年寄りがべちゃくちゃ喋っているスペースがない。一番奥のゴロゴロ転がっているスペースもみんな寝ていてとてもそこで大きな声で屈託なく喋っているという場所ではない。このおばあさんの本拠地が見あたらないということか。そうかといってこのおばあさんはデイサービスにいって同じような年齢構成の中にいるのは元気すぎていやなんだろうか。四六時中わぁわぁやっていないと気の済まないタイプはいろいろな人にぶつかったりする可能性もある。試行錯誤の結果ようやく見つけた場所なのかもしれない。
 外に出てくだんの安藤忠雄設計の美術館の横に「花豆」という週末、祝日しか開いていないレストランがあると書いてあり、腹が減って中込までは持ちそうもないので、高原野菜トルティーヤと書いてあるメニューに誘われて入ってみる。真っ白な壁に囲まれていて天井の高いレストランは高原の風が吹き抜けていてなかなか気持ちがよい。50代の男性が屈託なく気取りなくサービスをしているが、少々気取りがなさ過ぎる嫌いがなきにしもあらずである。メニューは三つ。ひとつはメニューにも書かれていないピザである。書かれているのはそのトルティーヤと高原野菜のカレー。ひとつずつ注文すると運ばれてきた皿のまぁ大きなこと。カレーの皿には塩でもんで酢であえたキュウリが大きなレタスの上に乗っている。ズッキーニ、カプシカム、大きなジャガイモが転がっている。これだけの量は女性には多すぎるだろう。こうした野菜は小海のお店から届けられているのだそうで、帰路その店にも気がついた。9月に入ったからだろうか、この社団法人小海開発公社が経営する一帯のレジャー施設にも日曜日だというのに、人影は少ない。

信濃毎日新聞 2008.1.1付

小海町の「八峰の湯」、利用者8万8888人に
 南佐久郡小海町の松原湖高原の町営日帰り温泉施設「八峰(ヤッホー)の湯」の利用者が31日、8万8888人に達した。2008年直前に、末広がりの8が並ぶめでたい記録となり、くす玉を割って祝った。
 該当者は新潟市の小学4年生三富駿君(10)。近くで家族とスキーをした帰りに初めて訪れた。三富君は「びっくりした。今年は最後に一番いいことがあった」と喜んだ。八峰の湯の入場券1年分と記念品が贈られた。
 同湯は2007年7月オープン。支配人の小池今朝之さん(55)は「大みそかに達成できて縁起がいい。新年もワカサギ釣りやスキー客でにぎわってほしい」と話していた。

日帰り温泉施設としてはどうなんだろうか。